スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←『赤い糸をたどって』 最終回 →『再会箱 caseⅣ』 第二回 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 作品紹介
もくじ  3kaku_s_L.png 上手な別れ方
もくじ  3kaku_s_L.png 空と海
もくじ  3kaku_s_L.png 地球の軌跡
もくじ  3kaku_s_L.png 夏に恋して
もくじ  3kaku_s_L.png お礼参り
もくじ  3kaku_s_L.png 遠くの隣人
もくじ  3kaku_s_L.png 道連れ
もくじ  3kaku_s_L.png 美しき幕引き
もくじ  3kaku_s_L.png 別れたら
もくじ  3kaku_s_L.png 願い集うとき
もくじ  3kaku_s_L.png 相方よ
総もくじ  3kaku_s_L.png 忙しい人たちへ(掌編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png 重要な選択
総もくじ  3kaku_s_L.png 未来(あした)が見たら
総もくじ  3kaku_s_L.png 親愛なるあなたへ
総もくじ  3kaku_s_L.png 赤い糸をたどって
総もくじ  3kaku_s_L.png 独り言(雑記)
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【『赤い糸をたどって』 最終回】へ
  • 【『再会箱 caseⅣ』 第二回 】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

再会箱(シリーズ)

『再会箱 caseⅣ』 第一回 

 ←『赤い糸をたどって』 最終回 →『再会箱 caseⅣ』 第二回 
 勤め先であるグループホームの日帰り旅行で有名な神社へとやって来た。
 ただし、社員旅行ではないため、入所者のお年寄りも一緒だ。
 元々、お年寄りの方の世話を苦に思わないからこの仕事に就いたのだが、せっかく旅行に来たのだから少しくらい息抜きをして楽しみたい気持ちはあった。
「そろそろ帰ろうか」というときに、バス出発前のトイレタイムと称して、皆の中から抜け出して来た。特に何をするでもないが、誰かの世話を抜きにして、周りの景色や雰囲気を満喫したかった。
 時折視界に入ってくる和風庭園のおかげで、そんな気持ちも少しは満たされた。できることならもっと落ち着いて観賞していたかったが、あくまで仕事できているため、それは贅沢というものだ。
 程々で諦めて皆の元に戻ろうとすると、木と木の間に獣道のようなものがあるのを発見した。
 誰もそこへ向かっていく様子はないため、正式な参拝をする場所というわけではなさそうだ。だからこそ余計に行ってみたい気持ちはある。
 時間は気になったが、それ以上に奥に何があるのかを知りたかったため、その道に足を踏み入れた。
「ちょっと覗くだけ」のつもりだったのだが、道は随分向こうまで続いており、簡単に終わりというわけにはいかなかった。
 それならばと、僕は全力疾走でその道の終わりを目指した。
 木と木の間を走り抜けると、目の前に小さな社殿が姿を現した。お世辞にも立派とは言えない建物だが、ちゃんと賽銭箱もある。特別に珍しい何かがあったわけではないが、多少の好奇心は満たされた。感謝の気持ちを込めて、小銭くらい入れてやろうと思った。ズボンのポケットを探っていると、社殿の奥から白髪に白髭のお坊さんが出てきた。
「その箱は賽銭箱ではないのです」
「えっ、違うんですか?」
「はい。その箱は再会箱と言いましてな……」
 お坊さんの話によると、『再会箱』と呼ばれるこの箱には不思議な力があり、再会したい人の名前を紙に書いて入れると、願いが叶うと言うのだ。
 箱のそばには白い半紙と筆ペンが置いてある。
「この紙に名前を書くのですか?」
「さようでございます。ただし、一つだけ忠告が」
「何ですか?」
「再会できる人は生涯でただ一人。それも一度だけです。その人と関係を続けようなどと思ってはなりません」
 箱の力を使った再会は運命を無理矢理ねじ曲げたもののため、元に戻す必要があるらしい。
「必ず再会できるんですか?」
「はい。箱の力は本物です」
 それならば、どうしても再会したい奴がいる。
 僕は筆ペンを手に取り、紙にそいつの名前を書いて箱に入れた。
 もちろん、箱の力など信じてはいなかった。ちょっとしたお遊びだろう。
 お坊さんに礼を言って、元来た道を引き返した。
 獣道を抜けると、僕の同僚であり、恋人でもある凛がいた。
 慌てた様子辺りを見回している。
 僕が声を掛けると、安堵したような表情をチラッと見せた後、口を尖らせた。
「どこ行ってたの? 放って帰ろうかって話していたんだから。電話しても圏外だし」
「悪い悪い。実はさ、そこに獣道らしきものがあるだろ? 何かなと思って奥へ進んで……」
「獣道ってどこよ」
「どこって、ちょうどそこに……」
「ないわよ」
 振り返って自分の指差す方向へ視線を送ってみたが、凛の言う通り、そこには何もなかった。
「あれ? おかしいな」
「もー、冗談言ってないで早くいくわよ。みんなバスに乗って待ってるのよ」
「えっ! マジ? 急ごう」
 僕は凛の手を引っ張って、慌てて駐車場に向かった。

 小

 グループホームとは、認知症の症状を持ち、病気や障害で生活に困難を高齢者が専門職員の援助を受けながら共同生活する介護福祉施設だ。
 入居者は介護サービス、生活支援サービスを受けながら、食事や掃除、洗濯等を自分たちでしながら、共同生活をしていく。リハビリやレクリエーションの機能訓練を通して、認知症の進行を緩やかにして、精神的な安定や自立支援を目的とした介護を行う。
 定員は九から十八人。少人数で長く生活することにより、入居者同士や施設職員たちと信頼関係を築き易い環境になっている。

 午前八時半から軽いスタッフミーティングが始まる。夜勤組からの引き継ぎとその他連絡事項の確認が主な内容だ。
「先日からお話していたように、今日から一人、新しく入所される方がいらっしゃいます。担当は予定通り、峰岸さんです。いいですね?」
 所長の言葉に、「はい」と凛は頷く。やや緊張した面持ちだ。新たに誰かと接する場合、相手がどんな人なのかわかるまでは少し身構えてしまう。
 彼女はそういう性格だ。
「十時頃にお見えになるらしいので、皆さん、入所式の準備のほうをお願いします」
 皆が一斉に返事をして、ミーティングは終了。解散になった。
「凛、何か手伝おうか?」
「ううん。でも困ったときはお願いね」
「ああ。任せとけって」
 入所者の認知症の程度には幅があるが、女性はもちろん、男にとってもキツイ仕事であることは間違いない。しかしここで働く女性は皆、自分に与えられた仕事は自分でやりきる強い者ばかりだ。今まで何度も凛を助けようとしたことがあったが、答えはいつも同じ。
「大丈夫だから」
 決して無理をしないで欲しいと僕は思っていた。

 小
 
 午前九時五十分になると、職員と入所者たちがレクリエーションルームに集まった。
「入所式」なんて大袈裟な名前が付いているが大したことはしない。
 所謂歓迎会の類いだか、酒を飲んだりもしない。
 入所者の紹介をした後、皆でお茶とお菓子をお供に三十分ほど話をする。
 そんな軽い雰囲気のものだ。
 十時を過ぎたところで、凛が白髪の男性を連れて部屋にやってきた。
 一斉に拍手が起きる。
 痩せ細った見た目からして、元気そうとは言い難く、足取りもたどたどしい。
「今日から……」
 誰もが聞き取れるようにと、凛がゆっくりと、大きな声で話し始める。
「皆さんと一緒に生活していくことになった、花岡和文さんです」
 凛の紹介の言葉に、穏やかな気分で耳を傾けていた僕の胸がざわついた。

 花岡和文……。

「花岡だって。あんたと同じ名前だな。親戚かい?」
 隣に座る山川さんというおじいちゃんが僕の肩を叩く。
「偶然だよ」と、僕は笑ってみせたが、もしあの再会箱という箱の力が本物ならば、偶然ではない。

 小
 
 花岡和文は、僕の父の兄……つまり伯父だ。真面目で仕事熱心、人柄も良かったが、良縁に恵まれることがなくずっと独身だった。そのせいもあってか、僕も随分とかわいがってもらった。誕生日やクリスマスのプレゼント、お年玉だけではなく、小学校から高校まで欠かさず入学祝いをくれた。
 もちろん、僕も伯父が好きで、「和(かず)おじさん」と彼を慕っていた。

 あの一件までは……。

 僕がまだ専門学校に通っていた頃のことだ。
 帰宅の遅い父より先に母と二人で夕食を済ませ、リビングでのんびりしているところへ誰かがやってきた。
 母はしばらくインターホン越しに受け応えをしていたが、「お待ちください」と受話器を戻した。
 母がどこか怯えた表情でリビングを出ていったので、僕も後に続いた。
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 作品紹介
もくじ  3kaku_s_L.png 上手な別れ方
もくじ  3kaku_s_L.png 空と海
もくじ  3kaku_s_L.png 地球の軌跡
もくじ  3kaku_s_L.png 夏に恋して
もくじ  3kaku_s_L.png お礼参り
もくじ  3kaku_s_L.png 遠くの隣人
もくじ  3kaku_s_L.png 道連れ
もくじ  3kaku_s_L.png 美しき幕引き
もくじ  3kaku_s_L.png 別れたら
もくじ  3kaku_s_L.png 願い集うとき
もくじ  3kaku_s_L.png 相方よ
総もくじ  3kaku_s_L.png 忙しい人たちへ(掌編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png 重要な選択
総もくじ  3kaku_s_L.png 未来(あした)が見たら
総もくじ  3kaku_s_L.png 親愛なるあなたへ
総もくじ  3kaku_s_L.png 赤い糸をたどって
総もくじ  3kaku_s_L.png 独り言(雑記)
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【『赤い糸をたどって』 最終回】へ
  • 【『再会箱 caseⅣ』 第二回 】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【『赤い糸をたどって』 最終回】へ
  • 【『再会箱 caseⅣ』 第二回 】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。