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 ←『赤い糸をたどって』 第三十三回 
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赤い糸をたどって

『赤い糸をたどって』 最終回

 ←『赤い糸をたどって』 第三十三回 
 困ったことになった。
 と言っても、今までのことを考えるとかなり贅沢な悩みだ。
 二人の女性のうち、どちらかを選ばなければならないなんて……。
 ただし、勘違いしてはいけないのが、相手から交際を申し込まれたものではないということだ。
 つまりどちらを選ぶか悩んだところで、フラレれてしまう可能性は残る。
 若槻と松田。
 二人ともとても魅力的な女性だし、例えフラレたところで悔いはない。
  
 いや、嘘だ。
 フラレていいわけがない。できることならオッケーをもらって、二人でブーケトスを退会したい。
 いつもならこうしてベッドで物思いに耽っていれば知らぬ間に眠ってしまうが、今日ばかりは違う。
 海へ行き、真夏の強い日差しにさらされて、充分疲れているはずなのに、まるで眠れる気がしなかった。
 梅田に言われた更新手続きの期限までまだ時間はあるし、もう一回ずつ会ってからにするか。
 そう考えて目を閉じる。
 いやいや、本当に後一回会えば決められるのか。余計に迷う可能性だってある。
 
 目を開き、仰向けだった体を横に向ける。
 それぞれのいい点ってなんだろう。
 若槻は真面目で優しくて、思いやりや常識があって、話していて楽しい。
 結婚した後のこともちゃんと考えている。
 松田は真面目で優しくて、思いやりや常識があって、話していて楽しい。結婚した後のこともちゃんと考えている……って、全く同じじゃないか。
 見た目はこの際関係ない。どちらもストライクゾーンに入っているし、それを結婚相手選びの決定的要因にするべきじゃない。
 それなら悪い点は……。
 
 体の向きを反転させる。何だか今日はムシムシするな。
 今のところ特に目立って悪い点は見当たらない。
 他に引っ掛かることと言えば、若槻とは社内恋愛であること。先日みたいなことは今後も少なからずあるだろう。
 松田の場合、あの超多忙なブラック企業が問題だ。休日に無理をさせて翌日に疲れを残すような過ごし方は良くなさそうだ。会える時間もあまり取れない気がする。
 まあ、どちらも永遠に解決しないようなことじゃないしな。
 いやいや、そんなことよりもっと気に掛けるべき大切なことがあるだろう。
 その「大切なこと」を自分自身に問いかけてみる。

 二人のうち、いったいどちらがそうなのか。
 
 静かに目を閉じると、そこに答えがあった。

 小

 翌週の日曜日。
 暑さが和らぐ夕刻に、俺はある公園のベンチに腰掛けて、その女性が来るのを待っていた。
「大切な話があるから必ず来て欲しい」と伝えてある。
 よほど鈍い人間でない限り、その言葉の意味することはわかっているはずだ。
 もう一人の女性には電話でお断りをした。
「運命の人に出会えて良かったですね」
 そう言われた。随分と気が早いが、実際にそうであって欲しいと思う。
 沢口にも断りの連絡をメールで送っておいた。
『わかりました』と一言。
 相変わらずの愛想のない対応ぶりに苦笑した。

 約束の時間まであと僅か。胸の高鳴りで体全体が揺れているように錯覚する。
 大きく一つ深呼吸をすると、「春見さん」と背中のほうから、誰かが俺を呼んだ。
 確認など必要ない。この心地好く耳に届く声は紛れもなく、彼女のものだ。
 すっと立ち上がって、声の主のほうへと向き直る。
「ありがとう。来てくれて」
 俺がそう言って笑うと、若槻も「どういたしまして」と目を細くした。
「あの……少し歩きながら話さないか?」
「いいですよ」
 先に歩き始めた俺の隣に若槻が並ぶ。何度か会ううちに、自然と歩調が揃うようになっていたから不思議だ。
 陽の光が直接当たるのを避けるため、できるだけ木陰を歩く。
「少し前にさ……」
 伝えることは随分前から整理してあった。後は頭の中で思い描いていた通りに言葉にできるかだ。
「アドバイザーの梅田さんから会員期間の終わりが近づいているって電話があったんだ」
「はい」
「二年なんてあっという間だよな……ブーケトスに入会してからずっと赤い糸をたどっていたんだけどさ、今までなかなか誰の小指に繋がっているかわからなかったんだ」
「はい」
「糸がピンと張っていたわけじゃなくて、弛んでいたり、縮れていたり、絡まっていたりしていたから」
 先程から「はい」としか言わない若槻の顔をちらりと見てみた。
 随分と緊張しているような面持ちだ。何か言いたくても言えないそんな感じかもしれない。
「でも気が付いたんだ」
 そこで俺は足を止めた。若槻もそれに倣う。そしてお互いの顔を見る。
「ひょっとすると、この糸はごく身近な人の小指に繋がっているんじゃないかって」
「それって……」と若槻が少し言葉を詰まらせる。
「私ですか?」
 その口調はとても遠慮がちだった。いかにも彼女らしい。
 俺は黙って頷き、言葉を続けた。
「若槻さんは嘘が嫌いだから、本当のことを言うけど……実はもう一人、仮交際をしている女性がいて、若槻さんと彼女のどちらを選ぼうか悩んでいたんだ」
「そうなんですか」
「うん。二人ともすごく魅力的な人だから」
「はい」
「それでいろいろ考えたんだけど、なかなか答えが出せなくて……だから余計なことを考えるのはやめて、一番大切なことを自分自身に聞いてみたんだ」
「どんなことですか?」
「明日いなくなって困るのはどっちだろうって……そうしたら若槻さんの顔が先に浮かんで来たんだ」
 もちろん、それは大袈裟な表現だ。実際は自分自身に問いかけをした時点ですでに答えは出ていた。
「俺の赤い糸。若槻さんの小指に繋がっていると思ってもいいのかな?」
我ながらキザだとは思ったが、一生を共にしたいと思う相手に捧げる言葉だ。このくらいのセリフは言ってもいいはずだ。
「はい」と笑顔で返事をくれると思っていたが、若槻は下を向いたままで、何も答えてくれなかった。
 まずい。
 ひょっとして……カッコを付け過ぎたんだろうか。これってもしかして……。
 最悪の結末が頭を過ったところで、若槻が顔を上げた。
「春見さん、右手を見せてください」
 何のことだろう。
 よくわからないが、若槻の言葉に従って、右手の掌を上にして差し出す。それに合わせて、若槻も自分の左の掌を差し出した。
「見えますか?」
「えっ……」
 若槻の言葉の意味するところが、すぐには理解できなかった。
「赤い糸です」
 そうか。そういうことか。
 彼女に言われてようやく気が付いた。自分の鈍さが我ながら情けなくなる。
「もちろん、見えるよ。お互いの小指に繋がっているのが」
 素直で、優しくて、他人に対する思いやりがある若槻。
 そんな彼女だからこそ、俺のこんな子供みたいなお芝居にも、馬鹿馬鹿しいとか気持ち悪いなんて言わずにつき合ってくれるに違いない。
「若槻さんはどう?」
 俺の問いかけに、若槻は照れ臭そうに笑って頷く。
「私にもちゃんと見えています」
 目一杯顔を赤くした若槻がとてもかわいくて、気が付いたら俺は彼女を思い切り抱き締めていた。
 
<Fin> 
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~ Comment ~

お疲れさまです! 

ラストが気になって、仕事中に読んでいます(笑)。

「明日いなくなって困るのはどっちだろうって」の言葉に、胸がいっぱいになりました。
ちょっと大げさなのかも知れないけど、こんな言葉、私も欲しかった・・・(笑)
良かった~♪
幸せは、やなり近すぎて見えにくかったんですね!
どちらの女性でも素敵ですけど、やはり若槻さんでよかったです!

楽しかった~!
あ、さらなるお楽しみもあるのかな??

kotanさんへ 

 仕事中にありがとうございました。笑。

 プロポーズにも近いものなので、このくらいの言葉はあってもいいかなって私も思いました。
 創作の世界くらい、クサくてもいいかなって。

 とても長い作品だったのですが、最後まで読んでくださってありがとうございました。

 ここからはお楽しみですが、実はこの作品は別の投稿サイトでも公開しています。
 そちらでは違う結末を用意しております。
 途中から展開が変わっております。春見と若槻さんが会社で冷やかされた後からが違います。
 どちらが好みかはきっと人によると思いますが、もし良かったら読んでみてください。
 また少しお時間を頂戴することになるかもしれませんけど。
 もし感想をいただけるのならこちらで結構です(登録しないと書けないと思うので)。

 http://novelist.jp/83754_p63.html
 
 途中の『◇ ◇ ◇』までは同じです。

なるほど♪ 

全く違ったラスト、そしてとても考えさせられるラストですね。
映画とかにするなら、こちらの方がよいかな~と勝手に想像しました。
読み手側がこの先を想像できますし・・・
でも、やっぱりハッピーエンドが好きかな。

結婚について、春見さんと女性陣とは違った価値観があったのか。
とにかく登場する女性陣はしっかりとした結婚観を持っていてすごいなーと思いました。
若槻さんとのラストが残念でたまりませんが、これからの彼女の幸せを心から願うことができますように。

一つの作品でもラストが違うことで、全く違った印象を持ちますね!
ゲームブックのように選択によってラストが変わる(笑)。

じっくり楽しめました!
ありがとうございます~♪

kotanさんへ 

この作品は公募に出したものなので、オリジナルは別サイトのものでした。
そこはやはりエンターティンメント性を優先しました。

でも私が本当に書きたかったのは、若槻さんと二人がくっつくシーンでした。
だから今回、ネットで公開するに当たって、そちらのシーンも書くことにしました。
私もやっぱりハッピーエンドが好きですから。

春見はこれからまた相手を探すことになるのですがら、いい人が見つかる可能性だってあります。
だからバッドエンドではないんですよね。

ここからは現実のお話。
資格の勉強をするのでしばらくお休みします。
再開するのは十一月頃です。その頃にまた覗きに来ていただければ、細々とやっていると思います。
そのときまでしばしお別れです。お元気で。

では改めまして、最後までお付き合いくださりありがとうございました。

お疲れ様でした! 

とても面白かったです。
次々と登場する女性もそれぞれがとても個性的で、書き分け方が見事でした。あ、こんな感じの人いるよねぇ・・・などと楽しませていただきました。
けっこう腹の立つ人や、なにこの人?的なキャラクター1人1人が良い意味でも悪い意味でもとても素敵でした。
最初、何気なく、そして地味目に登場した若槻さんが徐々に重みを増していく展開、ちょっとドキドキしながら読ませていただきました。
これは本命かな?名前もカッコいいし・・・サキは若槻さんを応援していたのですが、松田さんの登場で展開が読めなくなりました。
松田さんもとってもいい人ですもの。
春見さんが若槻さんに松田さんの話をしたとき、あれ、絶対焼もちでしょう?
職場でばれそうになったりした時は、若槻さん、折れちゃったんじゃぁ・・・などと要らない心配をしていたのですが、一気のエンディング。
実はもう少し紆余曲折があるかと思っていたのでちょっと驚きました。
でも2人がとても幸せそうで、よかった~とこっちまであったかい気持ちになりました。

ほんとうに春見さん、誠実の塊りみたいな人だなぁ。
普通なら沢口さんは別として、松田さんはキープしておくと思うんですよ。
春見さん、退路を断ってますもんね。
ま、そういう律儀なところが若槻さんや松田さんの心に残ったのかもしれませんけれどね。
わくわくして、どんどん読み進めて行ける素敵な作品でした。
ありがとうございました。

あ、違う結末の方も読ませていただきました。
サキの場合、正直、ハッピーエンドの方が良かったかな。
単純ですみません。
そっちの方では春見さんの健闘を祈ることしか出来ませんからね。

山西サキさんへ 

 山西さんが今回も読んでくれていたとは嬉しい意外でした。
 ありがとうございます。

 この作品はできるだけ違う個性を持ったたくさんの女性を登場させようと思っていました。
 山西さんの仰る通り、中にはちょっと腹が立つ人も常識なさすぎな人も出てきました。むしろ、それが現実的かなって。
 最後のほうに若槻さんとひけを取らない松田さんを登場させたのは筆者の意地悪ですね。

 紆余曲折もっとあっても良かった。その通りだと思いますが、こちらの結末は急遽書き足したものなので、「無理矢理感」は否めませんね。オリジナルは向こうのサイトのほうです。
 それにもう苦手なデートネタで引っ張るのには限界が来ていました。笑。

 春見の律義さバカ正直さは筆者である私譲りだと思います。
 例えそれで断れても悔いはないというか、そういう器用さはないからブーケトスに入会したんだと思います。

 私もハッピーエンドが好きです。
 だから本当に書きたかった結末はこっちでした。

 最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
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