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赤い糸をたどって

『赤い糸をたどって』 第二十九回

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 当日。待ち合わせ場所は直接その店だ。
 午前十時四十五分頃に『今、お店の前で待っています』と、松田からメールが届いた。
 約束は十一時なので、随分と余裕がある。
 時間にもきっちりとした人らしい。
 昨日の夜、予定通りで大丈夫かを確認すると、『はい。大丈夫です』と返事があった。ただし、その時点で時刻は午後十時過ぎで、『まだ仕事中です』と書いてあった。
 ひょっとすると、休むために必死になって仕事をこなしたのかもしれない。
 彼女に遅れること、五分。俺も店に辿り着いた。出入り口のそばにそれらしき女性がいる。とりあえず、駐車場に車を止めた。
 車から降りて、小走りで彼女に近寄り、一応名前を確認する。
「松田さんですか?」
「はい。そうです。春見さん?」
 紹介状で身長は知っていたが、思っていた以上に小柄な女性だった。顔はというと、写真より幼く見えた。彼女自身が話す仕事ぶりから、しっかりとした雰囲気を勝手に想像していたため、少々意外だった。
 昼食には少し早いためか、店内は空いており、すぐ座ることができた。
 松田はカルボナーラ、俺はペペロンチーノを注文した。
「思ったより元気そうで安心しました」
 俺がそう言うと、「えっ?」と松田は目を丸くした。
「ほら、毎日仕事が遅いですし、もっと疲れた顔をしているのかなと……」
「心配してくれていたんですか?」
「はい」
「ありがとうございます」
 そこで彼女に最初の笑顔を見せてもらった。
 カワイイ人だ。
「化粧を厚めにしているから……騙されていますね。春見さん」
 ユーモアもある。
「仕事、大変そうですね。チーフでしたよね?」
「はい。チーフって言っても、ただの押し付けみたいなものです。責任ある仕事をやらせるために、建前が必要だからそう呼ばれているだけですよ」
 先程までの明るい表情が一変して、暗いものへと変わる。
「松田さんの話を聞いていたら、新しい人が入っても長続きはしないんだろうなって気がします」
「そうですね。大抵の人はすぐ辞めちゃいます」
「松田さんは辞めようと思わないんですか?」
 そこへウェイトレスが二人分のパスタを運んできた。
「とりあえず、食べながら話しましょう」
 話題を振っておいてこう言うのもなんだが、「聞くだけ」、「話すだけ」になると、空気が重くなりそうな気がしたからだ。それに料理もうまくなくなる。
「毎日辞めたいと思っています。でも私の性格上、辞めるならきっちりと区切りを付けてからって思ってしまうんです。例えば、結婚とかね。私が結婚したいのは、ひょっとすると、今の仕事から逃げるためなのかもしれませんね……なんて、こんな女と結婚したくありませんよね」
 松田はそう言って苦笑いを浮かべた。
「いいえ、そんなことは……松田さんの立場ならそう考えたって可笑しくないんじゃないですか? それでもちゃんと区切りがつくまでって考えているのは偉いですよ」
「私も悪いんです。ある程度うまく手を抜けばいいんですけど、自分のせいで配送が遅れたり、商品の数が足りなかったりすると、迷惑がかかると思って、細かいところや他の人が済ませたところまでチェックしてしまうんです。そうしているうちに時間が足りなくなって……そんな感じです」
「責任感が強いんですね」
「馬鹿なだけですよ」
「でも辞められないんでしょ?」
「はい」
「だったら、それでいいじゃないですか。松田さんみたいに真面目な人、僕は好きですよ。どんなに忙しくてもメールは必ず返してくれるし、待ち合わせの時間はちゃんと守るし、当たり前のことなんですけど、それができない人って意外と多いんだなってブーケトスに入会してわかったんです」
「そうなんですか?」と、松田が驚いた表情を見せる。
「あっ、松田さんってまだ入会して間もないんですか?」
「はい。まだ一ヶ月くらいです。こんなふうにちゃんと仮交際をしているのは、春見さんだけなんです。一番初めに紹介状が届いたのが春見さんだったので……」
 これってひょっとするとチャンスなんだろうか。
「そうだったんですね。まあ、そのうちにわかると思います。話を変えましょうか? なんだかネガティブなことを言ってしまったし……松田さん、紹介状に『理想の夫婦像は両親』って書いてありますよね? 一体どんな方なんですか?」
「そうですね……」
 松田の顔が再び明るいものへと戻った。
「とにかく仲がいいです。お互いを思いやる気持ちが見ていて伝わってくるというか……喧嘩をすることはほとんどありません。私、弟がいるんですけど、子供の頃は家族四人で買い物に行ったり、遊びに行ったり、父が休日のときは必ずどこかへ出掛けていました。私と弟が就職して家を出てからも、父と母でよく旅行に行ったりしているみたいです」
「じゃあ、本当に仲の良い夫婦なんですね」
「はい。時折、夫の退職をきっかけに離婚したり、同じ墓に入りたくないって言ったりする夫婦がいますけど、あんなのは絶対に嫌ですね」
「確かにね」と、自然に腕組みをしてしまったため、慌てて解いた。
「御両親は松田さんの結婚について何か言っているんですか? ブーケトスのことは知っているんですか?」
「ブーケトスのことはまだ知りませんけど、いい人はいないのかって聞かれることはあります」
「きっと心配なんでしょうね。夜遅くまで働いているし」
「そうですね。早く結婚して落ち着いてくれたらって思っているのかもしれません。春見さんの御両親はどんな方なんですか?」
「適度に仲良くして、適度に喧嘩してって感じですね。まあまあ、ごく普通の夫婦です」少なくとも熟年離婚や違う墓に入ることを計画しているようには見えない。
「春見さんの結婚に関しては?」
「最近、少しやかましくなりつつありますね。まあ、ブーケトスにはそうなる前から入会していたんですけどね」
「ブーケトスのことはご存じなんですか?」
「あっ、いや、そこまでは……ただ、多少なら当てがあるって大見栄切っちゃったもんですから、今、焦っているところです」
「じゃあ、しっかり頑張って婚活しないと」
 松田はそう言って、目を細くした。
「そうなんですよ……ところで、松田さんの理想の男性ってどんな人ですか?」
「理想ですか……そうですね。仕事も家庭も同じくらい大切にしてくれる人がいいです。後は、いつでも『俺に着いて来い』じゃなくて、いざってときに『俺に任せておけ』ってタイプの人かな。夫婦として同じ立ち位置にいられる関係が理想です」
 彼女も若槻と同じで、結婚に対してしっかりとした考えを持っているようだ。
「春見さんの理想はどんな人ですか?」
「常識のある人、思いやりのある人。以前誰かに尋ねられた時はそう答えたけど、もう一つ付け足したいなと思っています」
「どんなことですか?」
「結婚した後のこと、つまり将来どうありたいかを考えている人ですね」
「じゃあ、とりあえず私は合格ですね」
「はい」
 二人、声を合わせて笑った。
「松田さん、体調のほうは大丈夫ですか? とりあえず食べ終えたので、今日はこの辺りで切り上げましょうか?」
「ありがとうございます。春見さんって、優しいですね。まだ大丈夫です。せっかくなので、食後のコーヒーでも飲みましょう。あっ、春見さんは紅茶派ですか?」
「そうですね」
 ちょうど皿を下げにきたウェイトレスにコーヒーと紅茶を注文した。
「松田さんがお仕事でお疲れなのは知っているんですが、もし良かったら、次はどこかへ遊びに行きませんか?」
 言った後で少し早過ぎたかという気もしたが、彼女は間違いなく『また会いたい』と思わせる女性だ。
 松田は大して迷った様子もなく、「いいですよ」と答えてくれた。
 今のところ、悪い印象は与えていないようで、ほっとした。
「どこかリクエストとかありますか? 近くで行ける場所でもいいですよ。動き回るより、映画を見たりするほうがいいかな? フルーツテーマパークとか……そうそう。足湯とかもなかなかいいですよ」
 過去の経験が思ったより役に立つ。苦い経験でもあるが。
「そうですね……行きたいところならあるんですけど、笑わないでくれます?」
「もちろん」
「じゃあ……」
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