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赤い糸をたどって

『赤い糸をたどって』 第二十三回

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「女はもっと現実的です」
 確か沢口も同じことを言っていた。俺の考えは現実離れしていて可笑しいものなんだろうか。いや、それにしても小谷の言葉が正しかったとは思えない。他人に対する思いやりがない。
 現実的というより、機械的だ。あんな女と結婚するくらいなら、このまま独身のほうが余程マシだ。

 夜になり、小谷からメールが届いた。件名は「ありがとうございました」
 文句でも送ってきたのだろう。仮に謝られたところで、断るという気持ちが変わることはない。「こちらこそありがとうございました」くらいは書いて送り返してやるか。
 そんな気持ちでメールを開封した。
『こんばんは。春見さん。今日はどうもありがとうございました。気を悪くさせてしまい、申し訳ありません』
 思ってもいないくせに。
『言葉の選び方はまずかったと反省はしていますが、嘘を言ったとは思っていません。せっかく春見さんが決めてくれた行き先だったので、楽しみたい気持ちはあったのですが、やはり面白くありませんでした』
 お任せだと言ったくせに。だったら始めから自分で決めろよ。
『春見さんとは二度会わせていただいたのですが、いろいろ検討した結果、お断りさせてもらおうと思います。大変申し訳ありません』
 いえいえ、むしろ助かりました。
『大きなお世話ですが、今回、私が春見さんに対して感じたことをお伝えするので、今後の活動に役立てて下さい』
 いや、マジで大きなお世話です。
『結婚に関しては真面目に考えていらっしゃるようですし、会話も積極的にしてくれます。待ち合わせ時間に遅れることもないし、礼儀正しく、常識もあります。
 ただ少しロマンティストの傾向がありますね。これに関しては詳しく書く必要ないですよね。
 貯金も少ないです。後プラス百万円は欲しいですね。
 それから素直過ぎることも減点対象です。確かに私はメールが嫌いだと言いましたけど、もらうと嬉しいものなので、もっと送ってくれても良かったです。放ったらかしにされている気がして、私なんてどうでもいいんだろうなと思いました。
 今日の行き先の件も、お任せとは言いましたけど、もう少し相談して欲しかったです。失礼ですけど、あまり女心はわかっていませんね。
 以上をまとめると、春見さんの総合得点は五十点というところですね。いい人なんですけど、結婚相手としては微妙です。どうぞ、参考になさって下さい。
 短い間でしたが、ありがとうございました。小谷』
 最後まで読み終えた俺は、右手に握りしめていたケータイを天高く掲げ、床に叩きつけるようとする態勢になっていた。
 よせ。ケータイに罪はない。
 そう言い聞かせて、右手をゆっくりと下ろした。怒りに震える手で『こちらこそありがとうございました』と、一言だけ入力して返信した。
 百パーセント外れではないにしても、こういうことを送ってくる小谷の無神経さが全く理解できない。いや、そうじゃない。これは単なる腹いせに違いない。
 彼女を総合得点で評価するなら、五点以下。
「絶対に結婚したくない相手」だ。

 小


 ゴールデンウィークがやってきた。恋人でもいれば、どこかへ旅行にでも行っていただろう。しかし残念ながらそんな人はいない。
 俺にとっての初日、五月三日は実家へ帰った。
 先日、つい口にしてしまった「結婚相手の当てがある」という言葉を、母はちゃんと覚えていた。
「それ以降、例の子とはどうなの?」と、いつの間にか結婚を考える相手がいることになっていた。母の勘違いを否定しようかとも思ったが、また婚親会の話が出ると面倒なので、「順調だよ」と適当に誤魔化した。
「だったらいいけど、相手の気持ちが変わらないうちに早くプロポーズしなさいよ。あんたなんて特に顔がいいわけでもないし、稼ぎがいいわけでもないんだから」
 息子に対して随分な言いようだ。それでも否定できないところが辛い。
 
 自分への慰めのため、久しぶりに沢口にメールをしてみた。
『ゴールデンウィークですし、どこかへ遊びに行きませんか?』
 一時間ほどして、返事が来た。
『ゴールデンウィークは両親と旅行に行きます。というか、もう行っています。笑。また誘って下さい』
 確か初詣の時も同じことを言われたな。
 沢口は随分両親と仲がいいらしい。
 明日は親友たちと夕食をとることになっている。それでゴールデンウィークの予定は終わり。
 なんだかなあ……。

 小

 五月四日。午後七時前。いつもの居酒屋チェーン店に、四人で集まった。
 離婚して独身に戻った秋山は、前回とは打って変わって上機嫌で、よくしゃべった。彼がそこまで結婚生活を苦痛に感じていたとは、正直思ってもみなかった。
「いやいや、本当に改めて自由って奴を満喫しているよ」
「やっぱり独身はいいもんだろ?」
 同じように機嫌良さげに秋山の肩をポンポン叩くのは、言うまでもない。独身貴族の冬月だ。
「今までは断ることも多かったけど、これからは頻繁に遊びに行けるから誘ってくれよ。金のこともあまり気にする必要もないからさ」
「いいね! いいね!」
 ますます冬月のテンションが上がる。
「それじゃ、盆休みに温泉にでもで行くか? 昔みたいに。なあ、夏木」
「……そうだな」
 夏木は静かに頷き、ビールを飲む。秋山が調子に乗って続ける。
「結婚しているときは風俗行くのだって気が引けたけど、もう関係ねえもんな」
「よく言うよ。店に行ったら一番最初に女の子を選んでいたくせに」
「なんかトゲのある言い方だね。春見君」
「そんなことないよ。なあ、夏木」
「……そうだな」
「春見は秋山に嫉妬しているんだよ。モテるから。実はもう次がいたりするんだろ?」
 冬月が茶化すように言うと、秋山が「まあな」と得意げに頷く。軟骨の唐揚げが口から飛び出しそうになった。
 くそっ、マジだったのか。
「会社の近所にある服屋の女の子と、時折遊びに行く程度の仲にはなってる。まだつき合うところまでは行っていないけどな」
 モテる人間というのはこういうものなんだろうな。人を惹き付ける何かがある。大した努力もせずにと言えば、怒られてしまうが、事実そうだ。
人知れず、地味ではあるが必死で婚活をし、出会いの数で言えば絶対に俺のほうが多いはずなのにうまくいかない。冬月の言うように、つい嫉妬してしまう。
そんな気持ちは決して悟られてはいけないが、「そんなもん、羨ましくもなんともない」などと言うと、却ってイジられるので、そこは素直に認める。
「いいよな」と溜息混じりに呟く。
「春見。重くなるからやめろ。まあ、これでも食えよ」
 冬月がそう言って、ブリ大根の入った皿を寄越してくる。
「お前、確か彼女募集して四年だったよな?」
「三年だって。去年の年末にも言ったぞ」
「それならもうすぐ半年経つ。本当に三年か?」
「そういや、四年目に入ったかもな……って、その辺は適当でいいだろ。相手のいることだ。なかなか難しいよ」
「募集するのをやめりゃいいじゃないか」
 冬月の言葉に秋山が口を挟む。
「そりゃ、女は面倒だっていうお前はそれでいいだろうけどさ、春見は違うだろ?」
 秋山の言葉に、俺は頷く。
「春見は女としゃべりたいし、遊びにも行きたい。エッチだってしたい。夏木だってそうだろ?」
「……そうだな」
 夏木も頷く。
「しゃべりたけりゃ、会社の女の子としゃべればいいし、遊びに行きたければ誘えばいい。エッチがしたけりゃ風俗に行けばいい」
 秋山がフォローなのか、フォローじゃないのか、よくわからないことを言う。
 またいつもの展開になりつつある。
「いいか。俺が欲しいのは、ひとときの満足じゃない。何て言うかな、こう……一人の女性と永遠を分かち合いたいわけだよ。わかるか?」
 冬月がふんと鼻で笑う。
「お前、そんなにロマンティストだったっけ? この前、秋山の口から結婚生活の現実について聞かされたばかりじゃねえか。なあ、夏木?」
「……そうだな」
「まあ、待てよ。秋山の場合は……だろ? 世の中全ての夫婦がってわけじゃないよな?」
「いやいや、皆、似たようなもんだって」と秋山が手を振り、俺の前からブリ大根の皿を持っていった。
「お前、どっちの味方なんだよ」
「確かに春見の言っていることを全部否定はしない。冬月の言うひとときの満足っていうのもわかる。ただ、『コイツと一緒にいたい』とかって思えるのは、結婚するまでなんだよ。例え、続いたとしてもせいぜい一、二年ってとこかな。飽きてくるって言ったら語弊があるけど、新鮮味がなくなる。結婚しなくても、長い間、つき合ったり、一緒に過ごしていたりしたら、自然とそうなる。だろ? 夏木」
「……そうだな」
「お前、さっきから『そうだな』しか言ってないじゃないか。中途ハンパ独身貴族としての意見を聞かせてくれよ」
 俺の言葉で、ちびちびと静かにビールを飲み続けていた夏木がジョッキを持ち上げ、一気に残りを飲み干した。「ぷはあ」と大きく息を吐き出すと、微笑みを浮かべながら、俺たち三人の顔を順に見ていった。最後に目の合った冬月が「どうした?」と遠慮がちに尋ねると、夏木の口から意外な答えが返ってきた。
「俺……結婚するんだ」
 突然の告白に残りの三人全員が「えっ」という言葉を口にした。その後、しばらく沈黙があり、最初に口を開いたのは秋山だった。
「彼女とは結婚するつもりはないってことで合意していたんじゃないのか?」
「もちろん、俺もそう思っていた。でも、ある日突然言われたんだ。『やっぱりあんたと同じ名字になりたい』って……」
 つまり彼女からのプロポーズか。
「必要以上に結婚っていう制度にこだわらなくたっていいって、お前そう言っていたよな」
「その通りだよ。今でもそう思っている。したってしなくたって一緒。だったらしてもいいんじゃないかって気がしたんだ。しないことにこだわっていたわけでもないからさ」
「あんまり悩んで決めたようには見えないよな?」
 俺がそう尋ねると、夏木が清々しい表情で頷く。
「うん。例えるなら、夕食のメニューを決めるような感覚だった」
「どんな感覚なんだよ」
「今日は鍋にしようか? いいよ。みたいな感じかな?」
「随分軽いな」
 思わず笑ってしまう。
「そう。軽かったよ。秋山は結婚したら変わるっていうけど、俺のところはそうはならない気がする。今までと同じ。変わるとすれば、彼女の苗字が夏木になることくらいかな」
 しばらく静かで穏やかな時間が流れた。
 冬月が「ビール、頼むか?」と、店員呼び出しボタンを押した。
「夏木」
 俺が名前を呼ぶと、夏木は「なんだ?」と目を細くした。
 何とも幸せそうな顔をしている。
「おめでとう」
 冬月と秋山も俺に倣い、「おめでとう」と声を揃えた。「ありがとうな」と夏木は少し照れ臭そうに、それに応えた。
 冬月と秋山の表情がどこか寂しげに見えたのは気のせいだろうか。
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~ Comment ~

価値観かなぁ・・・ 

小谷さんはかなり特別な考えを持っていましたね。お断りで正解かと思います。
女性から見ても、酷いなぁと感じました。

結婚が幸せと思う人、離婚して新たな人生を歩む人、独りでも老後を考えて過ごせる人・・・
結婚への価値観も人生観もいろいろですね。

今日は家族で秋田県角館町にある雲沢ドライブインに行ってきました!
“懐かしの自販機”で、250円の天ぷらうどんやラーメンを食べました♪
お天気で高速道路もそんなに混んでいなくてサイコーでしたよ!

kotanさんへ 

> 女性から見ても、酷いなぁと感じました。

 やっぱりそうですよね。極端すぎましたが、創作上のことなんでこういう人も必要かと思って登場させました。

 今の時代、結婚が正解という考え方がなくなりつつありますからね。
 夫婦別姓がいいとか、将来同じ墓に入りたくないとか、それなら無理に結婚しなくてもいいのになと感じる時はあります。
 何を求めて結婚したのかなあと。

> 今日は家族で秋田県角館町にある雲沢ドライブインに行ってきました!
> “懐かしの自販機”で、250円の天ぷらうどんやラーメンを食べました♪

 やっぱり麺類でしたか。
 あれってすごいですよね。楽しめたようで良かったです。
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