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赤い糸をたどって

『赤い糸をたどって』 第二十二回

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 夕食を済ませて風呂から上がると、ケータイのランプがチカチカと点滅していた。
『着信あり』と『新着メールあり』
 どちらも小谷からだった。
『こんばんは。春見さん。今日はありがとうございました。電話したんですけど、出られなかったので、用件のみメールで送らせてもらいますね。
 あの後、二人の方とお会いしましたが、一番印象が良かったのは春見さんでした。できればまたお会いしたいのですが、いかがでしょうか? 今度は今日のように忙しないのではなく、ゆっくりと時間を作ってどこかへ遊びに行きたいと思っています。
 メールで結構なので、お返事お願いします』
 良い連絡をもらったのに、素直に喜べなかった。後から会った二人と比べられた結果だというのが、どうにも引っ掛かる。あからさまに振るいに掛けられているような感じがして、あまり気分は良くない。
 しかし毎度のことながら、俺には後がない。もう少し様子を見てから決めてもいいだろう。
 返信ボタンを押して、『是非遊びに行きましょう』と送った。
 俺としては来週にでもと思っていたのだが、肝心の小谷の予定が詰まっていた。更に翌週の日曜日、午後一時から三時半までならどうにか空けられそうだということで、それに決まった。
「ゆっくりと時間を作ってどこかへ遊びに行きたい」と言った割には、結局、時間限定だ。しかしのんびりと順番が回ってくるのを待っている時間はない。
『行き先は春見さんにお任せします』
 ほとんどどうでもいいと思われているような対応で、少しずつ腹が立ってきた。
 いや、ひょっとすると、デートプランの上手下手を試されているのかもしれない。面接のような質問攻めをしてくるような女だ。可能性は充分にある。
 面倒くせえなあ……。
 あっ、いかんいかん。一生を共にする人を見つけるためだ。そんなことを考えるべきじゃない。
 ただ、気に入られようと必死になるのはやめておこう。「子供が何人欲しいか」と同じだ。先に無理をすれば、後で辛くなることは明らかだ。
 行ってみたいところならある。
 水族館だ。
 沢口と観た映画のワンシーンで水族館が取り上げられていたのと、観賞魚を飼うようになってから、興味の持ち方が少し変わりつつあったからだ。山上とのデートの時に提案してはみたものの、この前行ったばかりだと断られた。
 小谷はダイビングが趣味だし、俺にお任せだと言っていたので、断られることはないだろう。
 念のため、『水族館はいかがですか?』とメールしてみると、『オッケーです』と返事があった。会えるのは二時間半だし、恐らくそれだけで終了だろう。
 メールはあまり好きではないと聞いていたので、それ以降はメールを控えて、二、三日前に最終確認の電話を掛けることにした。

 小

 当日。待ち合わせは水族館「岬シーパーク」の最寄り駅。
 駅構内は、クジラやラッコといった水の中で暮らす生物のイラストや写真を使った看板、ポスターで賑わっていた。
 最後に水族館へ行ったのは、確か二十五の時。合コンで知り合った恋人と行ったきりだ。その女性とは一年半ほどつき合ったが、「好きな人ができた」と言われてフラレることになった。その「好きな人」というのも、合コンで知り合った相手だとわかったのは、それから随分と後のことだった。
 約束の時間に遅れること、三十分。ようやく小谷が姿を現した。「前の人との約束が予定より長引いてしまって……」というのが理由だった。
 そのためか、小谷の足取りは速い。遅れないようにと、俺もそれに続く。
「結構盛り上がったんですね」
「いえ、そういうわけじゃないんです。私の質問に対して、尋ねてもいないことばかりしゃべる人で……要するに話が長いんです」と、小谷は苦笑いを浮かべる。
「無口なのも困るんですけど、あまりしゃべる男も嫌ですね。春見さんも女性に対して同じでしょ?」
「そうですね。ブーケトスの会員の女性はやっぱり無口……というか、受身の人が多いので困ることもあります。ただ大阪のおばちゃんのノリで来られても辛いです。この前、パーティで話をした人は韓国ドラマにハマッているとかで、随分熱く語られてしまいました」
「それは強烈ですね」
 
 そんなことを話しているうちに、岬シーパークに到着した。
 岬シーパークは、「海水生物の館」と「淡水生物の館」の二つで成り立っていて、アシカやイルカなどの「海の人気者ショー」というのも観ることができる。
 子供連れも多いが、カップルもそれなりにいる。
 大人一人の入場料は二千三百円。小谷に限らず、とりあえずこういうものは割り勘で、奢るのは食事代のみだ。
 しばらく並んだ後に、受付窓口で入場料の支払いを済ませてメインゲートを潜ると、アジやサバ、イワシ、スズキ、ブリ、フグ、タイ、エイ、サメといったお馴染みの魚たちが混泳する大型水槽が出迎えてくれた。
「さすが、家の水槽とは違うなあ」
 久々に来た水族館ということで、俺はすっかり興奮していた。
「そんなの当たり前じゃないですか」と、対する小谷は口調も表情も完全に冷めたものだった。
「まあ、そうなんですけど……」
「さあ、次に行きましょう」
 俺としてはもう少し見ていたかったのだが、小谷はそんな心情を確かめることもせず、床に描かれた順路の矢印に従って歩き始めた。
 先程より少し小さな水槽に、カレイやヒラメ、キス、イシダイといった、同じように日本の近海に生息する魚が泳いでいた。小谷は「何も珍しくない」とでも言わんばかりに、さっと一瞥しただけで先を急ぐ。俺が遅れていると、小谷が立ち止まって、「この辺は全然珍しくないでしょ?」と笑った。ただし、目は笑っていなかった。確かに魚屋でも見れなくないものがほとんどだ。トレイや発泡スチロールに乗ったものだが……。
 次のコーナーは南国の海水生物たち。ナンヨウハギ、ニシキヤッコ、アデヤッコ、チョウチョウオ、そしてカクレクマノミが、イソギンチャクやサンゴの飾られたエメラルドグリーンの水の中で気持ち良さそうに泳ぎ回っている。
 自宅でするアクアリウムもそうだが、やはり美しさでは淡水魚は海水魚に勝てない気がする。
 思わず見とれてしまった。
「やっぱり規模が小さいですよね。春見さんも一度ダイビングをしてみたらどうですか? こんなの比べ物にならないくらい感動しますよ」
 そう言って小谷は更に先を急いだ。
 深海魚や無脊椎生物のコーナーは「気持ち悪い」と一蹴して、流された。
 その次はアザラシやアシカ、ペンギン、ラッコといった子供にも人気のカワイらしい生物たちの展示が続いた。さすがの小谷も今までよりは長く足を止めはしたものの、それほど楽しんでいるようにも見えなかった。
「少し休みましょうか?」
 あまりにハイペースで回ってきたので、そう提案してみたが、小谷は「いいえ」と首を振った。
「時間もありませんし、進みましょう」
 小谷の言葉通り、そのまま淡水生物の館へと向かった。
 世界最大の淡水魚と言われるピラルクを始めとし、デンキウナギ、アロワナ、ピラニアといった、海水魚にはない野性味溢れるその姿に男心がくすぐられた。自然と腕組みをしてしまい、ラッコで緩んだ顔がキュッと引き締まる。
 小谷は「海水に比べて水が汚く見えますね」というわけのわからない感想を残しただけだった。
 次のフロアは「日本の川」がテーマで、アユやイワナ、アマゴ、ニジマスといった国内の代表的な淡水魚とカワウソ、オオサンショウウオが展示されていた。やはり、田舎を彷彿とさせるこういう風景は心が和む。
 小谷はと言うと、「これで最後ですよね」と、とても嬉しそうな顔をしていた。この水族館の売りの一つである海の人気者ショーは、開演までの待ち時間が長いため、見送ることになった。
 そうして俺たちは岬シーパークを後にした。
「何とか時間内に一通り見ることができましたね」
 小谷の表情は満足げだ。もちろん、水族館に対してではないだろう。
「それにしても、この内容で二千三百円は高過ぎますよね」
 自分がそういう鑑賞の仕方しかしなかったくせによく言うよ。
 そこまで出掛かった言葉をグッと飲み込んだ。
「別に来たかったわけでもないのに」
 その小谷の台詞で、俺の中に確かに込み上げてくるものがあった。
 いかん。堪えるんだ。
 ボルテージの上がる自分に必死でそう言い聞かせた。
「まあ、もう二度と来ないからいいですけどね」
 吐き捨てるように言って、「アハハハ」と機嫌良さげに笑う小谷に対して、俺の忍耐力は完全に崩壊した。
「そういう言い方はないんじゃないですか?」
「えっ?」
 小谷が目を丸くする。
「一応、僕が選んだ場所ですしね」
「水族館のことを悪く言っただけで、別に春見さんを否定したわけじゃないです」
「そうですか? 僕にはそう聞こえましたけど」
「それは誤解です」
 申し訳そうなものだった小谷の表情が、いつしか険しいものへと変わりつつあった。
「もしそうだとしても、今は言うべきじゃない。ひょっとすると、二人が初めて遊びに行った思い出の場所になるかもしれないわけでしょ?」
 俺の言葉を聞いた途端、小谷が動きを止めた。二人の間に沈黙の時が流れた。しばらくすると、小谷がぷっと吹き出した。
「春見さん……女はね、もっと現実的ですよ。記念とか思い出を大切にするとかって、誰が言ったかわからないような情報を鵜呑みにしているのかもしれないですけど、実際は違いますから。少なくとも私はそうじゃないです。三十過ぎた男がそんなこと言うなんて、ハッキリ言って気持ち悪いです」
 頭の血管がドクドクとはち切れんばかりに血を送っているのがわかる。
「それなら気持ち悪くて結構です」
 これ以上、小谷と一緒にいると、自分の口からどんな言葉が出るか保証できなかったため、「失礼します」と言って、振り返りもせずにその場を後にした。
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~ Comment ~

こんばんは! 

春見さん、心の内を言えて良かったんだと思います。
彼女は現実的過ぎますもんね。
私だってちょっとは記念とか思い出とか考えますよ。
そして、相手の気持ちも・・・

文章を読んでいるだけで水族館の様子が分かって楽しいですね♪

GWは家族でどこかに行かれるんですか?
我が家では“懐かしの自販機”巡りでもしようかな~なんて、計画中です♪

kotanさんへ 

 時折いるじゃないですか。必要以上に相手の年収や職業に拘る人って。
 ああいうのってやっぱりイヤですよね。
 それだけなのかってね。

 私自身、水族館はとても好きな場所です。何度でも行きたいんですよね。

 GWは暦通りのため、旅行へ行くほどの休みはないです。
 懐かしの自販機巡り? とても気になる企画ですね。うどんとかカレーの販売機かな?
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