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「赤い糸をたどって」
赤い糸をたどって(上)

『赤い糸をたどって』 第十九回

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 パーティの日がやってきた。事前に郵送されてきた地図を頼りに会場へ向かった。
 とりあえず一人でもいいので、つながりを作っておきたい。
 会場である「憩い」という名の喫茶店は駅ビルの地下にあった。壁に赤いレンガタイルを張った昔ながらの造りをしていた。
 開けっぱなしのドアの内側に『本日貸し切り』の札が掛かっている。午前中は、俺の参加する二十代から三十代前半組で、午後からは三十代後半から五十代の組に別れている。
 制限時間は二時間。そこそこ時間はあるように思えるが、一対一で十人全員と話すとして、スタッフの説明やらドリンクの注文やらを考慮すると、一人の相手に割り当てられる時間は十分が限界だろう。その僅かな時間でどこまで自分をアピールできるかが勝負だ。しかし、あまりガツガツしていると思われないように気を付けなければ。そういうことは考えている以上に敏感に察知されてしまうものだ。
 開始時間の十五分前だが、入口に座るブーケトスのスタッフの女性に会員証を提示して中に入れてもらった。店内は二十人が座るといっぱいという程度の広さだ。パーティは始まっていないが、すでに前に座る相手と話をしている者もいる。こういうフライングに関しては全く問題がない。
 俺が腰掛けた席にはまだ女性は来ていない。いきなり出遅れてしまったというわけだ。
 喫茶店のスタッフに紅茶を注文して、案内状と一緒に届いた自己紹介カードを鞄から取り出した。ぼうっとしていても仕方がないので、先程入口で番号札と一緒に受け取った参加者一覧表に目を通すことにした。A4の紙を二つ切りにしたしおりに女性の名前がカタカナで五十音順に書き記してある。もちろん、女性には男性の名前を記した表が渡されている。一応、今までに申し込んだ者がいないかをチェックしてみる。パーティには、一度お断りをした、あるいはお断りされた相手に再び申し込みできるという特典がある。つまり敗者復活戦。一度断った相手とうまくいくなんて、極めてレアなケースだが、申し込みせずに紹介状を返却した場合もあるので、馬鹿にはできない。
 表の一番下に書かれた名前を見て、思わず「あっ」と声を上げそうになった。
 そこでようやく俺の前の椅子にも女性が座った。知らん顔もできないので、軽く会釈をすると、彼女も会釈を返してくれ、少しだけ笑った。格別見た目がいいわけでも、悪いわけでもなかった。
 それ以上に俺には気になることがあった。再び女性参加者の一覧表に視線を落とす。
『ワカツキ ルミ』
 十番目に確かにそう書いてある。前に座る女性に気付かれぬよう、店内をぐるりと見回す。それらしき人物はいない。
 俺の隣に、最後の男性会員が座った。
 ひょっとすると、後一人来ていないのが若槻だろうか。カタカナ表記のため、別人の可能性もある。
 違う意味で俺の胸が高鳴り始めた。
 パーティの開始時間である午前十時がやってきた。「ワカツキ ルミ」という女性はまだ現れていない。当日、急に不参加というのも珍しいことではない。そういう場合、一対一で話すところを一対二で話すことになったりする。あまりにドタキャンが多いと、男同士、女同士で話すこともあると、誰かに聞いた。
「それじゃ、お一人来られていませんけど……」と、ブーケトスのスタッフが立ち上がった。
「遅れてすみません!」
 息を切らせて店に飛び込んできたのは、紛れもなく、俺の知る「ワカツキ ルミ」こと若槻留美だった。顔を赤くして、とても慌てているのがよくわかった。
 彼女に気付かれぬよう顔を伏せていようかとも思ったが、最終的には話すことになるし、斜め前に座って気付かないほうがどうかしている。
 席に着いた若槻は、案の定俺の存在に気付き、大きく目を見開いて、「おおっ」と声にならぬ声を出した。大して動揺した様子もなく、笑顔で小さく手を振ってきた。今はとりあえず、会釈だけを返した。俺の前に座る女性が「知り合いですか?」と聞きたげに俺を見ていた。
 改めてブーケトスのスタッフが挨拶を始めた。
「皆様、こんにちは。本日は『憩いで恋して』に参加してくださり、誠にありがとうございます。私、司会を務めさせていただきます、宇佐美と申します。どうぞよろしくお願いします」
 年齢は俺より少し上だろう。自分もこれからパーティに参加するかのように楽しげに話す。
「こちらのお店はピラフが自慢のメニューだそうなので、良かったらどうぞ」というちょっとした宣伝を聞かされた後、いよいよパーティが始まった。まずは正面に座る相手と制限時間十分で話をすることになり、それぞれ自己紹介カードを交換する。カードには名前、年齢、職業、趣味、自己PRが書いてあり、それを元に話を始める。
『白井舞』
 それが俺の前に座る女性だ。年齢は三十五歳。今まで会った女性の中では一番年上だ。山上の一件もあり、年上ということに少なからず抵抗を感じていた。
「春見さんの趣味はアクアリウムですか? 素敵ですね」
「ええ、まあ」
 今はあまり触れられたくない話題だ。
「淡水魚ですか? 海水魚ですか?」
「淡水です」
「何を飼っているんですか?」
「グラミー、カージナルテトラ、後は苔対策としてオトシンクルスとヤマトヌマエビです」
「水草は?」
 まずい。この人、結構詳しいんじゃないのか。
「アマゾンソード、ミクロソリウム、ウィローモスを流木に巻き付けています」
 とりあえず覚えている物を挙げた。
「水槽の大きさは?」
「三十センチ」
「なるほど」と、白井は頷いた。
 何がなるほどなのか。
「まだ始めて間もないんですね」
 ど真ん中に投げてこられた。空振りどころか、デッドボールだ。
 若槻に聞こえやしなかったかとチラリと彼女のほうを見てみた。幸いなことに、自分の相手とのおしゃべりに夢中のようで、聞こえてはいなかったようだ。
「水槽は小さいですし、魚や水草も入門用かもしれませんが、別に始めて間もないわけじゃありません。なかなか時間が取れないので、できるだけ手間を掛けないようにしているだけです」
「そうなんですか?」
 信じていないようにも、疑っているようにも見えなかった。
「白井さんは随分と詳しそうですね。飼っているんですか?」
「いいえ」と、白井は慌てたように手を振る。
「前におつき合いしていた人が飼っていたんです。結構熱心にやっていて、家に行くと水槽がいくつも置いてあって……ちょっと引きました。でも眺めているのは好きです」
「男はハマっちゃうととことん行ってしまうところがありますから。白井さんの趣味はスポーツジムですか……どんなことしているんですか?」
「水泳がメインです。後はエアロビかな」
「どうりでスタイルがいいわけですね」
「いえいえ、これでも最近太り気味でどうしようかなって思っているんです」
 そうは言いながらも、白井はまんざらでもなさそうだ。
「お仕事もあるでしょうし、その合間を縫ってちゃんと自分磨きをしているんだから偉いですよ。派遣のお仕事って何をされているんですか?」
「今は特に何もしていないです」
「えっ?」
 思わず聞き直してしまう。
「半年前くらいに契約期間が終了して、それ以降は待機状態です。なかなかこちらの条件に合うものがなくて……」
 つまり現状は無職か。
「だってやりたくないことやっても仕方ないですし、給料が安いのも嫌ですから。そんなことないですか?」
「ええ、まあ、そうですね」
「ぼうっとしていても仕方がないからジムへ行くことにしたんです」
 白井はどこか誇らしげな表情をしている。先ほど彼女に言われた「まだ始めて間もないんですね」という言葉をそのまま返してやりたかった。
 それにしても能天気な人だ。仕事を選んでいる場合ではないと思うが。
「それにいつ結婚するかもわからないんだし、必要以上に仕事に打ち込んでも意味ないですから」
 この時点で、俺が彼女に申し込む可能性はゼロになった。
「いい仕事見つかるといいですね」
 そしてお相手も。
 嫌みを込めたつもりだったが、彼女は「ありがとうございます」と微笑んだ。
 そこで宇佐美が立ち上がり、「はい。十分が経ちましたあ~」と手を挙げた。
「自己紹介カードを相手の方に返していただいたら、男性のほうは時計回りに一つずつ席を移動して下さい。あっ、お飲み物も忘れずに持っていって下さいね」
 宇佐美の言葉に従い、ティーカップと共に席をずれる。前に座るショートヘアの女性に軽く会釈をして、腰を下ろす。この流れで行くと、若槻と話をするのは最後になる。
 例え気に入ったとしても全員に申し込みができるわけではなく、その人数はパーティの規模に依る。今日のパーティでは最大三名まで容姿や話した内容を走り書きでしおりにメモしておき、選択の基準にする。前回は解読不能で役に立たない部分もあったが……。
 とりあえず、先程話した『シライ マイ』の名前の横にはバツ印を入れておいた。

 その後も続けて別の女性と話をしたものの、「韓流にハマっています」とか、「パチンコやっています」とか、「休日は昼から一杯やっています」とか、容姿は別にして、「この人はちょっと……」という女性が多かった。
 そしていよいよ、若槻と話をすることになった。
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~ Comment ~

いよいよ 

今まで以上に楽しい展開になってきました~♪

早く続きが読みたいです!

kotanさんへ 

ここから後編って感じですね。
引き続きよろしくお願いします。
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