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赤い糸をたどって

『赤い糸をたどって』 第十五回

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 それを皮切りに、朝、昼、夕方、そして夜と、最低でも一日四回は山上からメールが届くようになった。内容はと言えば、挨拶と雑談がほとんどだった。四六時中ケータイと睨めっこしているわけではないが、さすがにこれだけ頻繁に送って来られると辛いものがあった。婚活の一つとして割り切るつもりだったが、やはり言うべきことは言ったほうがいいだろう。

『山上さんに一つお願いがあります。メールを送ってきてくれるのはとても嬉しいのですが、もう少し回数を減らしていただけると有難いです。返事は時間ができたときでいいと言われても、性格上すぐに返さないと気が済まないほうなので、他にやるべきことを後回しにしてしまうんです(融通の利かないダメな人間です)。気を悪くされたらゴメンなさい』
 水曜日の夜、夕食を終えてすぐにそういった内容でメールを送った。
 しばらくして返事が来た。
『ゴメンなさい。確かにちょっとしつこいかなって気はしていました。本当にゴメンなさい。控えるようにするので、このままお断りだけはしないで下さいね』
 何をビビっているんだ。
『大丈夫です。このくらいのことではお断りしません。笑』
『良かったです。そうそう。今度の日曜日は空いていますか? 特に予定がなければ、また会ってもらえませんか?』
 予定はないし、会おうと言ってくれるのは有難いことだ。進むにせよ、退くにせよ、会わなければ決めようがない。
 詳細は土曜日の夜に決めることになり、ケータイは沈黙した。
 胸を撫で下ろし、風呂に入ろうかと思ったところで、再びケータイが鳴った。
 まだ何かあったのだろうか。
 メールを確認すると、橋添だった。
『こんばんは。春木S。私のお気に入りに「ぷろヴぁんす」って洋食料理のお店があるんですけど、今日そこに行ってきました。今度一緒に行きましょうね!』
 あの……春木じゃなくて、春見なんですけど……それにそのお店には一緒に行ったことがあるんですが……あと「S」って何なんですか?

 小


 金曜日の夜、山上とどこへ遊びに行くのかを決めることになった。前回は食べに行く店を決めておらず、少々バツの悪い思いをしたので、今回はいくつか候補を用意しておいた。ところがそれもうまくいかなかった。
『ゴメンなさい。そこは行ったことがあるんです』

『そこもなんです』

『本当に申し上げにくいんですけど、そこも最近行ったばかりで……』
 そんな具合に、俺の案はことごとく却下されたため、『それじゃ、山上さんの希望を聞かせて下さい』とメールを返した。
 正直いい気分ではなかったが、そうしないと一向に話が進まない。
『ショッピングモールに行きませんか?』
 何とも意外な答えだった。というより、腹が立った。
 俺の案に対しては「そこへは行ったことがある」の一言で片付けたくせに、自分の出してきた案は、今や歩けば当たるほど、どこにでも建っているショッピングモールなのか。
 もう何だか面倒臭くなってきたので、『それでいいです』と返事を送った。

 小

 当日、前回と同じ駅のロータリーに、やはり山上が車で迎えに来てくれた。時刻は午後一時過ぎ。お互い昼食は済ませてある。
 例えば、最近、できたばかりだとか、激安店ばかりが軒を連ねているとか、そういうのがあれば、まだ納得できたのかもしれない。ところが山上が行くつもりだったのは、比較的近所にある、しかも開業したのはもう十年近く前の、これと言った目玉のないショッピングモールだった。強いて特徴を挙げるなら、海が見えるということくらいだ。ただし、恋人たちが愛をささやき合うのに相応しい美しさとは言えない。
 予想以上に退屈しそうな展開に力が抜けてしまい、助手席に体がめり込んでいきそうになった。欠伸が出るのを必死で堪えた。
「眠いですか?」
 山上に突然そう尋ねられて、慌てて姿勢を正した。
 気付かれていたらしい。
「すみません。昨日、寝るのが遅かったもので……」
 嘘だ。
「春見さんは仕事の帰りが遅いですもんね。テーマパークとかだとゆっくりできないかなと思って、ショッピングモールにしてもらったんです」
 そういうことだったのか。
 ひょっとすると、新しくできたところや激安店の多いところだと人が溢れ返るため、敢えて少し寂れたところを選んでくれたのかもしれない。
「着いたら起こしますから、寝ていてくれていいですよ」
 優しい言葉だ。嘘をついてしまったことに心が痛み、それ以降は少し前向きに会話を楽しもうという気持ちになった。
 
 駐車場に車を止めた後、一階から順に店を見て回った。女性の買い物につき合うのは正直苦手だが、結婚すれば日常的にしなくてはならなくなる。これもある意味、婚活の一つだ。
「ここ、入っていいですか?」
 山上に誘われて入ったのは、全国にチェーン店を展開する、カジュアルファッションの店だった。価格はリーズナブルで、幅広い年齢層が手軽に着こなせるものを取り揃えてある。
「春見さんはいつもどんな服を着ているんですか?」
 棚に並んだ服の一つを手に取りながら、山上がちらりと俺の顔を見る。
「大抵は今着ているようなカジュアルな感じのものかな。ここの店で買うこともありますし……そもそも社会人になってから普段着というのがあまり必要なくなってきました」
「日頃はスーツで通勤ですか?」
「はい。会社では社名入りの作業服を着ています」
「じゃあ、高いものは買わないんですか?」
「それなりのものを買って、長く着るほうです。もしくは値下げ率の高いものを買うとか」
「買い物上手なんですね」
「そんなに頻繁に買うわけじゃないですけどね」
 そうは言いながらも、褒められて悪い気はしなかった。
「山上さんはどうなんですか? ブランドものとか好きだったりするんですか?」
 そこは是非知っておきたいところだ。誕生日のたびにブランドの鞄やら財布をねだられても困る。
「ブランドへのこだわりとかはあまりありません。ボーナスが出たときなんかに頑張った自分への御褒美で買ったりする程度かな。それも毎回じゃありませんし」
 うん。悪くない答えだ。

 その後はインテリアと生活雑貨の店に入った。専門店より品数は少ないが、ソファや棚などは雑貨とうまく絡めて、客の販売意欲をそそるようレイアウトされている。
「春見さんは将来、御両親と同居されるつもりですか?」
 この質問に対する答えは、割と神経を使うところだ。両親との同居を望まない者はやはり多い。
「今はまだそこまで考えていないというのが正直な意見です。ただ、両親も嫁さんに気を使って生活するのは嫌だと思うし、始めから同居は望まないんじゃないかな。それでもできるだけ近くに住むに越したことはないと考えていますけど」
 自分で言いながら、そういうことを意識する年頃になったかと、改めて認識した。
「山上さんは同居に抵抗がありますか?」
 断固拒否という場合もある。山上とこれからどうなるかはまだわからないにしても、はっきりさせておいて損はない。
「もちろん、喜んで……というわけではないですけど、必要なら構わないです。あっ、でも御両親との相性にも依るかな……とだけ付け足しておきます」
「それはそうですよね」

 モール内の店を一通り見終えると、フードコートでお茶を飲むことにした。
 窓際に腰掛けると、海を見渡すことができる。視界に入るのは、白い砂浜ではなく、高速道路の吊り橋と点在するビル、そして漁船がほとんどだ。しかしその隅っこにただ一つ、このロケーションに相応しくない建物が建っている。
「あれって、教会ですよね?」
 俺の指差す方向へと、山上も視線を移した。
「はい。結婚式場があるんです」
「以前から?」
「そうですよ」
「ここには随分前に来たことがあるんですけど、全然記憶にないです」
 自分の注意力のなさが、少し恥ずかしくなった。
「多分、結婚なんて意識していなかったからじゃないですか?」
「そうかな」
 山上のフォローに頭を掻くしかなかった。
「海が見えるって言っても、こんなところですから……あまり人気はないみたいですけど、料理はとても美味しいって話ですよ」
「へえ、そうなんですか? 山上さんってそんなふうに結婚式場を調べたりしているんですか?」
「そういうわけじゃないです」と、山上は右手を振って俺の言葉を否定した。
「同僚の友達があそこで式を挙げたらしくて……要するに又聞きです」
「演出も大事ですけど、やっぱり料理は美味しいほうがいいですもんね」
「はい。春見さんはこういう式がしてみたいとかってあるんですか?」
 この辺りが男と女の考え方の違いだろうか。正直言って、俺は式にはあまり興味がない。それより新婚旅行の行き先のほうが悩みそうだ。 
 もちろん、そんなことは口が裂けても言えない。
「あまり派手なのはちょっと……って感じです。人並でいいと思うんですけど、やっぱりその辺りは話し合って決めるべきかなと」
 盛大にやってすぐに離婚というのはカッコ悪い。いやいや、始めから離婚を想定するのはマズイだろう。
「じゃあ、私と同じ考えですね」と、山上は満足げに何度も頷いていた。
 相手を選ぶための判断基準としてはこだわり過ぎのような気もするが、彼女にとっては必要なものなんだろう。
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~ Comment ~

こんにちは! 

山上さんはメール以外は問題がないように思えますよね、今のところは(笑)。
むしろ女性らしさが出て、初対面の印象が変わりました。
橋添さんはいい味出しますね~♪

結婚って本人同士の問題ではないから、ホント、難しいですねぇ。。

kotanさんへ 

そうですね。
一度話をしたので、メールの回数は減らしてくれると思います。
他にコメントをいただいた方からも、山上さんの印象が良くなったという答えをいただきました。

橋添さん……味で片づけていいものか。苦笑。

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