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「赤い糸をたどって」
赤い糸をたどって(上)

『赤い糸をたどって』 第八回

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『春見さんにはどこか行ってみたいところがありますか?』
 高崎からのメールだ。昼食後に彼女とメールをするのが、ちょっとした日課になりつつある。締まりのない顔になっていることは、自分でも容易に想像できた。
「何だか最近、機嫌がいいですね」
「はい、どうぞ」と、俺宛のファックスを手渡してくれながら、若槻が白い目で俺を見る。
「何だよ。その目は」
「だって顔がイヤらしいんだもん」
「イヤらしいって……別にいいだろ。嬉しいときくらいニヤけても」
 高崎のメールに対する返信は後回しにして、ズボンのポケットにケータイを仕舞った。
「あっ、もしかして彼女できたんですか?」
 若槻の顔がぱっと明るくなる。
「いや、まだそこまでは……うわっ!」
 いつの間に近寄ってきたのか、俺と若槻の背後から牛が……じゃなくて、牛島がぬっと顔を出していた。
「そうか。春見君。君にもついに彼女ができたか!」
 随分遠くにいたはずなのに、よく盗み聞きしている。
「いや、だから、そんなんじゃないですって」
「別に隠すことはないだろ? なあ、どんな人?」
 馴れ馴れしく肩を組んでくる。
「普通の人ですよ。それにまだつき合っているわけじゃありませんし」
「でもいい雰囲気なんだろ?」
 牛島はまるで自分のことのように嬉しそう……なんて上品なものじゃない。それこそまさにイヤらしいニヤけ面だ。
「まあ、今のところはいい感じですね」
「そうかあ……いいなあ、いいなあ」
 声に力が入っている。本気で羨ましがっている様子だ。
「何言っているんですか。自分は結婚しているじゃないですか」
「そりゃそうだけどさ。結婚して十年以上一緒にいると、飽きてくるというか、新しい恋がしたくなるというか……」
 溜息混じりに、しみじみといった感じで話す牛島の声は次第に小さくなっていった。
「ひどい! 奥さんがかわいそう」
 若槻の口調は冷たい。牛を柵の外に追い払うなら今しかない。
「本当にひどいよな。俺もそう思う」
「うっ……」
 牛島の顔が引き攣る。
「私、こんなことが言える男の妻には絶対なりたくない」
「俺、こんな夫になりたくない」
「なっ、何だよ。お前たち、二人揃って……あっ、そうだ! 俺、銀行に金を下ろしに行かなくちゃ」
 牛島の体が靴に車輪でもつけているかのようにスーッと離れていく。
「今日、嫁の誕生日でさ。プッ、プレゼントは何にしようかなあっと」
 絶対に嘘だろ。

 小

 高崎と植物園に行く約束をした。ショップくらいはあるだろうから、「何か買ってあげよう」というところまでは計画済みだった。
 はっきり言って、俺は植物に関しては何の知識もない。さすがにそれでは高崎に呆れられてしまう可能性もある。
 そのことに気が付いたのは、約束の三日前だ。
 仕事を終えてマンションに帰った俺は、まずはパソコンの電源をオンにした。有名な草花の情報だけでもインターネットで仕入れておくつもりだった。
「春見さんって植物のことに詳しいんですね」
 高崎の俺に対するポイントが上昇する光景が目に浮かんだ。そういう場合、何と答えれば追加ポイントがもらえるだろうか。
「いいえ、詳しいうちには入りませんよ」か。いや、あるいは「まあ、少しは」か。
 どちらも言い方一つで、謙虚にも嫌味にも聞こえる。ここは敢えて「今日のために少し勉強してきました」と、前向きさをアピールするほうがいいか。
 高崎は知ったかぶりをするタイプより、知らないことは知らないと認めるタイプのほうが好きそうなので、やはり三つ目の……。
 そこまで考えたところでケータイが震えて、テーブルの上で騒音を立てた。
 高崎からのメールだ。
 件名は『ゴメンなさい』
 約束の日に急用でもできたんだろうか。
 軽い気持ちで開封して中身を読み始めたが、次第に胸が高鳴っていき、最後には手が震えて「嘘だ」と零していた。
 念のため、もう一度読み返す。
『こんばんは。春見さん。今日も一日お仕事お疲れ様でした。今度の日曜日に植物園へ行くお約束をしていましたが、こちらの都合で行けなくなってしまいました。
 ゴメンなさい。実はこの度、一人の男性会員さんとおつき合いすることになりました。春見さんを含めた他の方にはお断りの連絡をさせていただくと同時に、活動を休止してその方との交際に専念しようと思います。勝手を言って本当に申し訳ありません。短い間でしたけど、ありがとうございました』
「嘘だ!」
 二度目の「嘘だ」があまりに大声だったのに驚いたのか、若槻お気に入りのレッドグラミーが水面から飛び上がった。ポチャンと軽快な音を立てて水中に戻ってからも、しばらくは水槽の中を落ち着きなく泳ぎ回っていた。
 いや、待てよ。このメールは高崎ではなく、沢口からのメールだったのかもしれない。
 深呼吸をして送り主を確認してみたが、間違いなく『高崎美沙子』となっている。
 そりゃそうだ。沢口と植物園に行く約束などしていない。
 もしかすると、高崎は別の会員に送るつもりだったのを、間違って俺に送ったのかもしれない。
 二度目の読み返し。
『こんばんは。春見さん』
 あっ……間違いなく、俺宛だ。
 しかしこんなことで諦めるわけにはいかないと、俺は返信ボタンを押した。
『そうですか。それはおめでとうございます。あの、とても押し付けがましいのですが、こういうのはどうでしょう? とりあえず僕の紹介状は返却せずに高崎さんの手元に置いて頂いて、もし残念ながらその男性と結婚に至らなかった場合に』
 そこまで入力して、俺は手を止めた。
 本当に押し付けがましいよな。
 クリアボタンで全文を消去して、改めて始めからメッセージを打ち直した。
『それはおめでとうございます。お気になさることはありませんよ。結婚までの道のりは長くて大変なことも多いでしょうけど、どうぞお幸せに。こちらこそありがとうございました』
『送信完了』の画面を確認すると、深い溜息が出た。パソコンのモニターには、花の散った桜の画像が表示されていた。

 小

「はあ……」
「また溜息。これで何度目ですか?」
 若槻が呆れたように尋ねる。
「そんなの数えていないよ」
「昨日までのニヤけ顔はどこに行ったんですか?」
「人生ってさ、天気みたいなもんだよな。今日が晴れだからって、明日も晴れだとは限らない」
「まあ、そうですね」
「天気と違って厄介なのは、予報もなしに台風が直撃することだね」
「直撃したんですか?」
「そう。壊滅的」
「フラれましたか?」
「グサッ」
 高崎のことはかなり気に入っていただけにショックも大きかった。しかし考えてみれば、あんな美人で非の打ちどころのない女性と俺がうまくいくはずがない。今のうちに断られて良かったのかもしれない。会う回数が増え、気持ちが傾いていけばいくほど、フラれたときのショックは更に大きくなる。
「あれ? 春見君。何だか元気がないな」
 牛島だ。俺と若槻の会話をずっと聞いていたくせに、今気が付いたかのようなフリがわざとらしくて腹立たしい。
「若槻に聞いたんだけどフラレたんだって?」
「私、何も言っていません」
 若槻の言葉を無視して、牛島の俺に対する横やりは続く。
「まあ、そういうこともあるさ。人生って天気みたいなもので、今日が晴れだからって明日も晴れとは限らないからな」
「それ、俺が言ったんじゃないですか」
「とにかく元気出せよ。お前がそんな顔していると俺まで辛くてな」
「笑っているじゃないですか」
「若槻、俺、笑ってるか?」
「満面の笑みです」
 その後も牛島はチクチクと傷口を針で突き刺すようなことを言ってきたが、適当にあしらっておいた。
 ブーケトスの性質上、今回のようなことは避けては通れない。それは俗に言う「二股」とか「浮気」とかいうものとは全くの別物だ。紹介状を受け取った相手が自分以外に何人とどれだけの関係なのかは、本人の口から語られない限り、わかることはない。
「あなた以外に八人の方と仮交際していて、そのうち三人とは何度か会いました。一人の人とは結構いい感じで、今のところ、婚約に一番近いのはその人です」
 こんな具合に現状を語られてしまうのも嫌だ。
 高崎を責めることなどできない。もしその男より先に彼女が俺と出会っていれば、結果はまた違っていたかもしれない。
 月並みな言葉だが、縁がなかったと割り切るしかない。
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~ Comment ~

辛いなぁ。。 

登録の規則って、ある意味辛いんですね。
真剣に結婚相手を探す以上は仕方がないのかも知れませんが、
数人の異性と様子をみて・・・となると、登録するときにかなりの覚悟が必要ですね。。
一期一会の縁を大切にしすぎる人には会員登録は難しいような(笑)、割り切った関係が必要ですね。

今後の予測が私には不可能になってきました・・・(笑)
だからこそ先が気になる、そんなお話です♪

kotanさんへ 

 そうですね。本当に結婚が目的の場所ですからね。
 ある意味競争率が高いというか、ライバルは会員全員ですからね。
 お互い選ばれるチャンスも多いですが、断られるチャンスも多いです。

 また次があります。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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