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赤い糸をたどって

『赤い糸をたどって』 第一回

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赤糸

『会員期間終了まで残り一年です』
 色鮮やかな桜色を背景に表示されたそのメッセージを見て、思わず深い溜息が出た。僅かな崩れさえない美しいパソコンの文字は、見る者の心情によっては冷たささえ感じる。
 一年前、四十万円という大金をつぎ込んで、結婚情報センター「ブーケトス」に入会した。
「出会いの機会が増えるわけだし、二年もあれば、楽勝。俺に相手が見つからないのは、出会いがないからさ」
 入会する前はそう思っていた。
 実際のところはと言うと、この一年で個人的なやり取りをした女性は十四人。そのうち四人とは実際に会うことができたが、一度きりで次はなく、「いい人なんですけど」でお仕舞いだ。残りの十人はメールを何度か交わしたのみで、会うことなく消滅。
 つまり収穫はゼロ。
 強いて挙げるとすれば、「俺に相手が見つからない原因は、出会いが少ないからではない」と、わかったことが収穫だ。
 のんびりとしている暇はない。今日をさぼれば、残りは三百六十四日になるのだ。
 活動の基本となるのは、今開いているインターネット上のブーケトス会員専用サイト、「マイページ」の利用で、言うまでもないがログインにはパスワードが必要だ。
一番上に『ようこそ! 春見大地さん』とあり、二行目に先程の会員期間の残り日数が表示されている。「歓迎はするけど、大事なことを忘れないでね」と、警告を受けたような気がして、背筋がピンと伸びる。
マイページの主なメニューは「登録情報」、「仮交際中の会員様」、「会員検索」、「パーティ・イベントへの参加」、「有料オプションの申込」、「お問い合わせ」の六つ。
「登録情報」では、文字通り俺自身の情報が確認できる。氏名、年齢、生年月日、住所、電話番号、メールアドレス、学歴、年収、勤務先、免許及び資格、趣味、身長、体重といった基本的なことに加え、離婚歴、子供の有無、子供の好き嫌い、共働きに対する考え方、両親との同居の予定、飲酒及び喫煙の度合い、ギャンブルへの考え方、そして自己PRといった、結婚相手としての判断基準に重要なものが詰め込まれている。
 入会時には戸籍謄本や住民票、最終学歴の卒業証明書、給与明細まで必要で、嘘をつくのが難しい仕組みになっている。なお、会員期間中の情報変更に関しては、同様の書類を再提出する必要がある。ただし、身長、体重や趣味、連絡先、自己PRなど、大抵のものは、マイページ上でも簡単に変更が可能だ。
 メニューの一つ、「会員検索」が活動の肝とも言える機能で、ここから相手探しが始まる。
 画面上に表示された項目を、希望条件に合わせてクリックで選択していく。
「年齢」は二十代後半から三十代後半にチェック。俺自身は三十歳。二十代前半は離れ過ぎだし、結婚を考えるには少々幼過ぎる気がする。三十代後半も歳は離れてしまうが、幼過ぎるよりはずっといい。条件しだいでは許容範囲に入る。
「住まい」は近隣四県。遠距離は、相手も自分も骨が折れることは目に見えているし、長続きしない可能性が高い。時間が限られているため、そういうのは予め避けておく。
「学歴」は高卒以上、ただし、自分より上の大学院卒は外す。
「年収」はゼロから百万円は外して、自分の収入である四百万円までにチェックを入れる。共働きに関する俺の考え方は、子供ができるまでは働いてもらいたいし、その後も必要であれば、働いてくれることを望んでいる。独身の今でさえ働いていないような人にはその辺りを期待できそうにないし、俺より収入が多い人では、結婚前から力関係が決まりそうで嫌だった。
 検索条件で入力できるのはここまでだ。後は個別に確認する形になる。「検索」ボタンをクリックすると、待ち時間およそ五秒で条件に合致する女性会員がアルファベット表記でズラリと並ぶ。
 一度申し込みをした相手は、「申込済」あるいは「お断り」と記されており、二度と申し込めない。点在するお断りの文字を眺めると、自分の敗北ぶりがよくわかる。名誉のために言っておくが、このお断りには俺からのお断りも含まれている。
 まだ唾を付けていない女性会員のプロフィールを一つ一つ順番に確認していく。今の時点でわかるのは、「年齢」、「住所の一部」、「年収」、「趣味」、「身長・体重」、「自己PR」だ。
 身長はやはり自分より低い、百七十センチ以下を選び、体重に関しては身長とのバランスを見る。
 趣味に関してはこだわらない。世間一般を見ていると、同じ趣味を持つ夫婦のほうが少ない気がする。ただし、無趣味の人やちょっと変わった趣味の持ち主は避ける。以前、趣味の欄に『人間観察』と書かれた女性からの申し込みがあったが、丁重にお断りさせてもらった。
 俺が重視するのは、「自己PR」だ。
 
『はじめまして。素敵な人と出会えればいいなと思っています。よろしくお願いします』

 こういう女性にはまず申し込まない。
 真剣さが伝わって来ないからだ。文章を書くのが苦手な者がいることはわかっているし、俺自身も決してうまいわけじゃない。しかし、何度も書き直して自分の思いを一生懸命に伝えようとしたのか、あるいは適当にさらりと流してしまったのかは読めばわかる。生涯を共にする相手へ捧げるメッセージが在り来たりの言葉で綴った二、三行ではあまりにいい加減過ぎる。
 この会員検索機能で致命的なのは、写真を見ることができない点だ。今は文字による情報だけを頼りに「申込」ボタンを押すしかない。
 今月の申し込みは、N子さん(二十八歳)、M子さん(三十二歳)、S子さん(三十歳)、H子さん(二十九歳)、K子さん(三十歳)、A子さん(三十六歳)の六人とした。検索機能で一ヶ月に申し込める最大人数だ。これ以外に、俺の条件に合わせてコンピュータが自動的に選んだ女性を毎月三人ずつ紹介される。つまり合計九人の女性と出会いのチャンスが得られることになる。
 申し込みが受理されると、インターネット上ではわからない登録情報の詳細と白黒の顔写真が印刷された俺の紹介状が、ブーケトスから相手に郵送される。
 そこで気に入られれば、ブーケトスに「お受けいたします」と連絡が入り、今度は俺のほうにその女性の紹介状が送られてくる。ここで初めて相手の連絡先を知ることができる。つまり最初の連絡は申し込んだ者からしかできなくなっているのだ。
 これが「仮交際」の始まりだ。
 逆に気に入られなければ、俺の紹介状はブーケトスに返却され、俺には『お断りされました』という悲しいお知らせがメールで届けられる。
 お断りの手順は仮交際成立以降も同じで、どちらかの紹介状が返却された時点で二人の関係は終了となる。
「もし嫌だと思ったら、わざわざ相手に連絡しなくても、紹介状を返却してくれたらいいから」
 そう言うのは、四十代前半くらいの女性アドバイザーの梅田だ。一応俺の担当ということになっているが、言葉を交わしたのは入会時の時だけで、それ以降は「調子はどう?」の一言もない。アドバイザーによっては親身になって相談に乗ってくれたり、パーティーの無料券をくれたり、相手を紹介してくれたりする者もいるらしい。
 梅田は釣った魚には餌をやらないタイプということだろう。
「黙って紹介状を返却してくれたらいい」と言うが、それまでメールをしたり、会ったりしていた人に、一言もなしにお断りされるのはやはりショックだ。実際、俺も何人かにそれをやられた。
 そういう相手の気持ちも考えられないような人間なら、黙って離婚届を置いて出て行かれる可能性もある。断られて良かったというものだ。
 
こんな台詞、やっぱり負け惜しみにしか聞こえないよな。
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~ Comment ~

こんにちは~。 

“結婚情報センター”や“お見合い”等の経験がないのでとても興味深いなぁと思いました。
やはり真剣に将来のことを考えての申し込みなので、いい加減な気持ちでは登録できないですよね。。
何十年も前、赤川次郎氏の小説にも“結婚相談所”に申し込んで数人の登録者と付き合ってみる・・・と言うお話がありましたが、確かミステリーではなく純粋に素敵なお話だったように思います。
記憶は定かではありませんが・・・

続きが楽しみです!

kotanさんへ 

近頃の婚活は熱いですもんね。
第三者から見ても圧倒されてしまうほど、熱心だったりします。
けどその先にある結婚の実態を知ると……まあ、これ以上は言えませんが。笑。

今回長くなりますが、最後までお付き合いいただけると、とても嬉しいです。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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