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息子たちへ(シリーズ)

『息子たちへ』 其の四 厄介な連中に絡まれたら

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 昔から「待つ」というのが好きじゃない。
 試験の結果、先方からの見積、踏み切り、新商品の発売日、告白の返事と、例を挙げればキリがない。
 見た目はのんびりとしていることが多いが、実はとてもせっかちなのだ。

 今日は二十五日。給料日の会社が多いらしく、ATMには列ができていた。いつもならこんな日は避けるのだが、どうしても今日中に金を振り込む用があり、並ばざるを得なくなったのだ。
 人通りの多い駅前というにも関わらず、ここの出張所にはATMが一台しか設置されていない。
 並び始めておよそ十分。順番が回ってくるまでに、ようやくあと二人となった。何とか昼休みのうちに用は済みそうだ。
 やはり待つというのは好きじゃない。何かして待とうにも中途半端だし、集中できない。とにかく無駄な時間を過ごしているようで、損をした気分になる。
 そうこうしているうちに、先の一人が中に入っていった。
 後は前に並ぶお婆さんだけだ。
 ここまでくれば、イライラも随分と和らいでいた。
 そこへ突然、角刈りに小太りの男がやってきて、お婆さんの前に割って入った。
「婆ちゃん、悪いなあ。急いでるから入れてくれや。なっ」
 言葉は柔らかいが、目が笑っておらず、態度は威圧的だ。お婆さんは何か言い返せるはずもなく、ただ黙り込んでいる。
 後からやってきてよくもぬけぬけとそんなことができるものだ。
 男と目が合った。
「なんや、お前。文句あるんか?」
 唸るような低い声を出し、鋭い目で私を睨んでくる。
 こちらが何も言っていないにも関わらず、そういうセリフが出るということは、自ら悪いことをしていると認めているようなものだ。
 本当に急いでいるのなら、別に一人くらい入れてやってもいいと思っているが、いかんせんコイツ態度が気に入らない。
「ありますよ。みんな順番を守って並んでいるでしょ」
 私の目も鋭く尖っていたに違いない。私は気が弱くて、ケンカもからっきしで、典型的な小心者だ。その証拠に今、心臓は激しく膨らんだり、萎んだりを繰り返していた。
 ただ、こんなふうに他人を脅して自分の思い通りにしようという奴にすんなり従うことはしたくなかった。
「急いどる言うとるやんけ!」
「ほんなら頼み方があるやろ!」
 男が声を荒げたことで、私も反射的に大声を出していた。
「誰に物抜かしとんねん、コラッ!」
 男はお婆さんを押し退け、私に駆け寄ると、胸ぐらを掴むでもなく、いきなり私の顔を殴った。左の頬に激しい痛みを感じて私は地面にひれ伏した。
(あっ、これ完全にヤバいパターンやわ)
 私は横になった姿勢のまま体を丸め、執拗に繰り返される男の蹴りを耐え凌いだ。歯向かったところで勝ち目がないことがわかったからだ。
「もうやめてあげて。今、空いたからあんた先に行ってちょうだい」
 お婆さんがそう言うと、男の暴行はやんだ。
「今度会うたら殺すからな」
 男はそう言い捨てて、ATMの中へ入っていった。
「お兄ちゃん、大丈夫か?」
 お婆さんが優しく声を掛けてくれる。私はゆっくりと上半身を起こした。
「はあ、何とか」
 今のところ、どこかが激しく痛むということはない。
 そこへあの男がATMから出てきた。まだ何か言ってくるのではないかと、身構えたが、チラリと一瞥しただけでどこかへ行ってしまった。
「あんまり無理したらあかんよ。警察へ行くか?」
 お婆さんが泣きそうな顔をするので、安心させるために、私は笑って見せた。
「いいえ。大したことありませんから」
 とは言うものの、体中がズキズキ痛い。
「ワシら、散々並んで待ってたのに、後から来て入れろはないわなあ」
 私の後ろに並んでいた年輩の男性が呆れた口調でそう言った。
 私が一方的にやられるのを黙って見ていただけのくせに、今更味方のような顔をされるのは腹立たしかった。

 それから予定通り、金を振り込んだ。昼からは会社を休んで、念のため、病院へ行くことにした。
 診断の結果は打撲と内出血。骨折などはしておらず、湿布をもらって帰ることになった。
 脅しに屈せず、言いたいことはちゃんと言って自尊心は守ったはずなのに、スッキリとした気分ではなく、
 むしろ情けない気持ちしかなかった。

 小


「どないしたん!」
 顔が腫れ、湿布を貼って帰宅した私に、妻の美智子はおろおろと慌てた様子を見せた。
「いやあ、えらい目に合うたわ」
 ソファに腰掛け、ここまでの経緯について説明した。
 妻を安心させるために、できるだけ軽い口調で。
「……というわけで、大したことないってさ」

「よう言うた! 名誉の負傷やな」

 勝ち気な妻ならきっとそう言うだろう。これで私の気分もスッキリするというものだ。
「この……」
「えっ?」
「アホ! ボケ! カス!」
 ソファから立ち上がった妻が、私の頭に岩でも叩きつけんばかりの勢いで罵声を浴びせた。思わず「ヒッ!」と頭を抱え込む。
「そんなことして何の得になるねん!」
「いや、損得やなくて……」
「その男がちゃんと並び直したわけでもないし、あんたは顔がボコボコやし、病院代は掛かるし、何もええことないやないの!」
「せやかて、ミッチー。言いなりになるのも癪やん」
「あんた、ニュース見てるか? ホンマに些細なことで大怪我させられたり、殺されたりしてるやろ」
「そりゃまあ……」
 確かに妻の言うように、最近、常識では理解し難い事件に耳を疑うことが多い。
「あんたの気持ちがわからんわけやないんやで。ウチかてそんな奴は嫌いやし、言いなりになるのもイヤや」
 妻の口調は先程より穏やかになっていた。
「あんたは損得やないって思うかもしれんけど、やっぱり何かあったら損や。相手にせんに限るわ」
 悔しいが、妻の言っていることは正しい。
「それでも自尊心のほうが大事やって言うんやったら、もう止めへん。せやけどな……」
 妻は再びソファに腰を下ろし、腫れた私の左頬に右手でそっと触れた。
「あんたがこんな目に合うて一番辛いのはウチなんやで」
「ミッチー……」
 妻は静かに頷き、優しい笑顔を見せてくれた。
 この幸せを守るためやったら、自尊心なんか捨ててもええよな。
 そう思ったの束の間、次の瞬間、妻の表情は眉を吊り上げた恐ろしいものへと豹変した。
「それだけは忘れんといてや!」
 彼女の右手が私の左頬を捻り上げた。
「うぎゃあああああー!」

 小

 息子たちへ
『敬遠は逃げではなく、勝つための作戦です』




 今年の一月十二日に次男が誕生しました。
 それを機にタイトルを『息子へ』から『息子たちへ』に改題しました。

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~ Comment ~

おめでとうございます! 

お子様が誕生されたんですね!
おめでとうございます!
家族に笑顔がたくさん増えますね♪

シリーズで、この作品が初めて拝読するお話になります。
私、ミッチーの気持ちがとても良く分かります。
女って現実的だし、今はとても怖い世の中ですもの。
波風を立てるより、ちょっとの我慢かな~。
以前、某ショップでコーヒーを飲んでいたら、レジでスタッフ全員を土下座させる客に遭遇したことがあります。
その時はとても怖くて、その場にいた他の客全員(自分も含めて)が何も言えず、何もできなかったんですね。
当の本人は暴言を吐いていなくなりましたが、本当に怖くて震えていました。
今思えば、携帯から警察を呼ぶことも、警備員や店長、マネージャーを呼ぶこともできたはずと悔やまれます。
でもやはり事件に巻き込まれては、自分だけじゃなく、家族や会社にも迷惑をかけてしまうから、ここは普段から対処方法を考えていなければ、と思いました。。
それも、勝つための作戦ですよね。

我が家にも思春期・反抗期の男の子がいます。
それでもやっぱりかわいいし、男の子って本当に優しいですね♪

先日はお手数をかけて本当にすみませんでした。

kotanさんへ 

先日の件、こちらこそ申し訳ありません。
勝手に非公開にしてしまって。

そうなんです。二人目が生まれて、先日里帰りから帰ってきたばかりなんです。
もうすでに賑やかになっています。

本当、最近、おかしくて物騒な事件が多いですもんね。
下手に関わるとロクなことがないです。
店員に土下座させたとか、文句を言って安くさせたとか、世間的に見ればむしろ恥ずかしいことなのに、それを自慢げに武勇伝のように語ったり、ネットで公開したりする、所謂「イタイ奴」が増えてきていますよね。
それをカッコがいいとか、みんなが喜ぶと思っているんでしょうね。
何だか厄介な世の中になってきたので、自分の身を守るのに精一杯になりそうです。

このシリーズは軽いタッチで、一回一回が短めなので、他の物も是非読んでいただければなと思います。
そしてkotanさんに息子さんがいるのでしたら、是非、推薦図書として。笑。

いつもありがとうございます。
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