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 ←『キッカケをください』 →『だまされて、私』 -後編-
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「忙しい人たちへ(掌編集)」
忙しい人たちへ②

『だまされて、私』 -前編-

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 本当に私って馬鹿だと思う。
 少し冷静に考えればおかしいって気が付いたはずなのに。
 いいえ、そうじゃないわね。
 わかっていたけど、彼が嘘をついているって信じたくなかっただけ。
 だってきちんと言葉で約束してくれたし、指輪もくれた。式場を見学にも行ったし、新婚旅行の話もした。
 後はお互いの両親に会うだけだった。

「結婚したい人がいる」
 
 そう話したときの父と母の驚きと喜びをまぜこぜにしたような、何とも言えない複雑な表情を、私は忘れない。
「いつ会わせてくれるの? 早くしないと逃げちゃうわよ」
 そう言って、母には随分せっつかれた。
 それは私も同じ気持ちだった。一刻も早く彼と結婚して、一緒に暮らしたかった。
 ところが、彼のお母さんが心臓の病気で急遽入院することになったのだ。
「さすがにそんな状況では」ということで、両親との顔合わせは先送りになった。

 それからしばらくして、彼からお母さんの入院が長引きそうだと聞かされた。
 私が見舞いを申し出ると、「体調が不安定だから」と言って許してくれなかった。「それより……」と彼が口籠り、どこかバツが悪そうに下を向いた。

「別れよう」

 そう言われるんじゃないかと考えて、ドキドキした。
 ところが彼の口から出た言葉は全く予想もしていないものだった。

「お金を貸して欲しい」

 別れ話ではないことに安堵したものの、それ以上に困惑する気持ちのほうが強かった。私が口を噤んだままでいると、彼が申し訳なさそうな顔で言葉を続けた。
「入院もそうだけど、それ以上に薬にかかる費用も高くて……親父と僕の貯金を切り崩すつもりではいるんだけど、退院してからのことも考えると、少し足りないんだ」
 嘘を言っているようには聞こえなかった。
 その時は。
「医者なんて酷いもんだよ。このくらい費用がかかりますけど、どうしますか? だってさ。つまり金がないのなら諦めろってことだよな。そんなのできると思うかい?」
 そう言われてしまうと、私も断りづらくなった。ここでお金を出さなければ、見殺しにするのかと言われるようなものだ。
 それでもすぐに答えを出せずに下を向いた。
「そうだよな。いくら君の将来の母親と言っても、まだ結婚したわけじゃない。こんなことを君に頼むなんて間違っているよな。今の話は忘れてくれ」
 どこか突き放すような言い方。「将来の母親」という言葉が引っ掛かった。
「いくら……必要なの?」
 気が付いたら、そう尋ねていた。
 ひょっとしたら彼は静かに笑っていたのかもしれない。
「五十万」
 結婚のためにお金は貯めていたから、出せないことはなかったが、やはり大金には違いなかった。
 未だ渋る私の心情を察したのか、彼が優しい声で付け加えた。
「心配しなくても大丈夫。保険金が下りたら返すから」
 その言葉で私の決意は固まった。
「ありがとう。母も喜ぶよ」
 彼の笑顔を見て、何の疑いも抱かずに「良かった」と安心する私がいた。

 三週間が過ぎた頃、今度は「手術のための費用が足りない」と相談された。なんだかんだと良いように言われて、更に五十万円を貸した。
 それ以降、彼と連絡が全くつかなくなった。電話番号も変えられていたし、家に直接出向いてみたが、すでにもぬけの殻だった。
 それでも「何か事情があるに違いない」としばらくは彼の連絡を待ち続けていた。

 本当に私って馬鹿だと思う。
 両親にはお金を貸したことも、だまされたこともまだ話していない。
 あんなに喜んでくれてのだ。言えるわけがない。
 両親だけじゃない。友達や会社の人にも「結婚するかもしれない」と言ってしまった。
 格好が悪過ぎる。
 考えてもみれば、三十過ぎたこの歳まで男っ気なんてほとんどなかったに等しい。男性とのお付き合いは、高校生の時と社会人になってから一度だけ。それもごくごく短期間。付き合ったと言っていいのかどうか怪しいくらい。
 そんな私が結婚なんて……話が上手過ぎると思った。
 いや、嘘だ。

(私にもようやく春が来た)
 
 そう思っていた。とんでもなく浮かれていた。
 簡単にだまされてしまったことが情けなかった。
 お金を取られてしまったことが悔しかった。
 弄ばれたことが悲しかった。
 彼がのうのうと笑いながら暮らしているんだと考えると、腹立たしかった。
 気持ちは深く沈んでいき、浮かびあがろうとする気力が湧いてこなかった。

(死んでしまおう)

 そう思った。
 飛び降りは怖かったし、首を吊るのは死んだ後が最悪だと知っていたのでやめた。
 最終的に選んだのは、手首の脈を切ることだった。
 風呂場へ行き、洗面器にお湯を汲むところまではすんなりとできた。問題はそこから先で、カミソリを握ると手が震えた。
 ためらい傷のできる理由がよくわかった。
 結局、一滴の血を見ることもなく、私は手首を切ることを諦めた。
 
 もう少し楽に死ねる方法はないかと、インターネットで調べてみた。いろいろな方法が載っていたが、どれも苦しみが全くないというわけでもないし、失敗すれば後遺症が残ると書いてあったりして、思わずぞっとする。
(やっぱり死んでしまおうなんて簡単に考えるべきではないのかもしれない)
 そんなふうに考えながらもネットサーフィンを続けていると、ある掲示板に『楽に確実に死ねる方法を知りたいんだが』という書かれているのを見つけた。
それに対して、他の誰かが書き込みをしていた。

『おそうじ名人に頼め』

 その下にURLもついていた。
 こういう場合、実際に開いてみると、何の関係もないページだったり、すでにリンク切れだったりすることも多いが、物は試しと一応クリックしてみた。
 ちゃんと違うページに飛んだ。
 白地をバックに大きな黒文字で『おそうじ名人』と書いてある。間違ってはいないようだ。今時にしては珍しく、動画もなければ、画像もない。本当に文字だけだ。

『とりあえずキレイにしたい方、ウンザリするほど散らかっている方、ゴミをほうったらかしにしてしまう方。
 こんにちは。ハウスクリーニングの専門業者、おそうじ名人です。
 お部屋はもちろん、階段やろう下、お庭やガレージ、あらゆるところの清掃をお引き受けいたします。
 餅は餅屋、そうじはそうじ屋に、やはり何事もプロに任せるのが安心!
 只今、通常価格の20%OFFキャンペーンを実施中。期間限定のため、お早めにメールにてご連絡下さい』

 なんだ。ちゃんとした掃除屋じゃないか。
 落胆してページを閉じようとすると、画面の一部が光った。
 やっぱりそうだったんだ。
 紹介文を読んでいる途中、何かがチカチカと光った気がしていたのだ。瞬きに注意しながら、画面をじっと見つめていると、文字の一つがホンの一瞬だけ赤く光るのがわかった。
『ほ』と言う文字だ。
 いったい何を意味するのだろう。
 そのまま画面を凝視していると、今度は『う』が光った。
 ひょっとすると、これは文章になっているのかもしれない。
 そう考えた私は、一度そのページを閉じて開き直した。
 これで始めから読むことができるはずだ。
 しばらくすると、『と』の文字が光った。それから少し時間が過ぎて『う』の文字。次は『ほ』、その次は『う』
 順番に点滅する文字を目で追って繋げていくと、思った通り一つの文章ができあがった。

『とうほうころしや。しごとのいらいはたいとるにやみとかけ』

(当方、殺し屋。仕事の依頼はタイトルに闇と書け)

 殺し屋と言えば、銃で撃たれたり、ナイフで刺されたり、首の骨をへし折られたりと、恐ろしい殺され方しか思い浮かばない。
 いや、相手はプロだ。何か上手い方法で楽に殺してくれるかもしれない。
 とりあえずメールしてみよう。聞くのはタダのはずだ。
 タイトルに『やみ』と記入して本文を書いた。
『はじめまして。仕事を依頼するかどうかまだ悩んでいるのですが、いくつか質問があってメールさせていただきました。
 一つ目の質問です。できるだけ苦しまないことを希望しているのですが、方法は選べますか。
 二つ目の質問は、どのくらい費用が掛かるかです。
 以上二点、回答よろしくお願いします』
 とりあえずまだ名前は伏せておいた。
 何を馬鹿げたことをやっているのかと思われるかもしれないが、私は真剣だった。

 落ち着かない気持ちでメールを待ち続けること、十五分。返事が届いた。
『方法については明かせない。但し、そちらの希望はある程度考慮する。
 料金は一人百万円。標的の顔写真と大まかな住所を送れ。後はこちらで調べる。
 入金確認から一週間以内に仕事を完了させる。
 一つでも不満があるなら他を当たれ』
 その下には銀行口座が書いてある。名義人は『ヤマダタロウ』
 こちらには『ヤマダハナコ』で入金するように、とのことだ。
 決して安くはないが、どうせ死ぬのだ。残しておいても仕方がない。

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