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相方よ

『相方よ』 -1-

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「なんや。緊張してるんか? 顔が恐いぞ」
 私の隣に立つ男が不敵な笑みを浮かべる。彼のほうが私より三十ほど年下なのだが、遠慮などはまるでない。しかし私もそれを不快に感じることはない。
「何を言うとんねん。お前のほうこそ震えとるやないか」
「これは寒いからや」
「ほう。真夏のこの時期にかい」
 神社の敷地内の一角に設けられた特設ステージ。
 夏祭りの余興として、私たちはそこで漫才をすることになっている。今は、舞台裏の所謂袖と呼ばれる場所で出番を待ちながら、お互いの緊張を解そうと、わざといがみ合っているところだ。

 子供の頃の私はとても引っ込み思案で、人前で話したり、目立たったりするのが嫌いな人間だった。
 幼稚園の劇は森の木の役、小学校の学芸会は主人公のクラスメイトB。どちらもほとんどセリフがなかった。
 そんな私だが、人を笑わせること、笑わせてもらうことは好きだった。会話や行動に笑いの要素を盛り込むことは常に考えていた。オチのない話はつまらないと思ったし、下ネタは認めなかった。
 体を張ったり、でかい声を出したりするだけの、若手の勢い頼みの笑いより、ベテランのしゃべくりに本当の面白さを感じた。
 クラスの単なる「おしゃべり」で目立っている奴より、「俺のほうが遥かに面白い」と思っていた。
 だからと言って、私の性格上、それを前面に押し出すこともしなかった。
 影の薄い私がポツリと漏らした言葉で皆がウケる。それだけで快感だったので、漫才をするなんてことはまるで考えていなかった。

 小


「畠山、俺と漫才せえへんか?」
 私にそう声を掛けてきたのは、高校二年の時の同級生で、天然パーマに丸い黒縁眼鏡の大村だった。
 大村とはそれまでほとんど話をしたことがなく、遊びは愚か、漫才に誘われるなんて、全く想像もしていなかった。
 それは二学期が始まって、二、三日が経ったある日の放課後のことだ。細かいことは何一つ教えてもらえずに、学校から少し離れたところにあるマクドへ連れて行かれた。
 大村は「何でも好きなもん注文したらええよ。俺が奢ったるから。ビッグマックのセットでもかまへんで」と、とても気前が良かった。とりあえず、私はテリヤキバーガー、大村はエビフィレオのバリューセットを注文して、窓際の席に座った。周りには私達のような高校生も数人いたが、同じ学校の連中ではなかった。
「それで、さっきの話やけど、どうや?」
「漫才やろうって話か?」
「せや」
「なんでまた、漫才やねん」
「俺、子供の頃から漫才がメッチャ好きでな。親に劇場に連れて行ってもらったりもしてるんや」
 大村の目は生き生きしていた。
「ほんでいつしか俺自身も漫才をやってみたいと思うようになってん。この髪の毛、天パや言うてるけど、ホンマはパーマあててるねん。眼鏡も伊達やし」
「第一印象でインパクト与えるためか?」
「せやないと、俺ってビジュアルは至ってフツーやからな」
 パーマと眼鏡、どちらもしていない、元の大村の顔を知らないため、同意も否定もできなかった。
「眼鏡の件はともかく、パーマの件は黙っといてくれよな」
「そんなんわざわざバラさへんよ」
「おおきに」と、大村はエビフィレオにかじりついた。彼が「まあ、とりあえずお前も食えや」と言うので、私もテリヤキバーガーの包みを開いた。
「お前が漫才を好きなんはわかったけど、なんで俺を誘うねん。俺はな、人前でしゃべんのは苦手なんや。それやったら、池上とか中条とか誘ったらどうや?」
 池上と中条。この二人はクラスでもよく目立ち、笑いやムードを作る存在であることは自他共に認められていた。
「あかん、あかん。アイツらは確かに声もでかくて目立ってるようにみえるけど、俺からしたら大しておもろうない。所謂若手の笑いに過ぎん」
「勢いに任せた笑いゆうことか?」
「そうや! ようわかっとるやないか。さすが俺の見込んだ男だけのことはあるなあ。ところで、ホンマにビッグマックじゃなくて良かったんか?」
 大村は機嫌良さげに笑ったが、私は首を横に振った。私の反応が薄いので、大村が「ええか、お前には才能があるんや」と念を押してくる。
「池上とか中条にはない、優れた才能がな。それを人前でしゃべるのが、苦手やからで埋もれさせるのはあまりに勿体ないで」
 大村の目を見ていると、嘘やお世辞のようには聞こえなかった。ただ……。
「俺ってお前とそんなに話したことないよな? それやのに、なんで才能があるとかってわかるねん」
「俺はこう見えても、相方探しを中一の頃からずっとやっとるんや。直接会話せんでも、俺以外の誰かとしゃべってるところとか、動きとかを見れば、そいつがどのくらいおもろいかくらいはわかる。お前がこまめにネタを仕込んでるのはお見通しや」
 大村は得意気に椅子にふんぞり返って、ストローでコーラを啜った。
 確かに大村の言う通りだった。私は日頃の言動のところどころに笑いの要素を盛り込んでいた。
「ただ残念なことに、お前のそれを拾い上げれる奴は、ウチのクラスにはおらんな。俺を除いては」
大村が体をぐっと前に乗り出してきた。
「お前は安心してボケまくれ。俺が必ずツッコんだる。だから俺と漫才せえへんか?」
「せやけど、俺、人前では……」
「そんなもんはすぐに慣れるって。目指すは来年の文化祭や」
「文化祭!」
 想像しただけでも心臓が張り裂けそうだった。
「心配せんでも、いきなり文化祭とは思ってない。ある程度練習したら、まずはクラスの連中の前でやってみるつもりや」
 私が即答できずに黙り込んでいると、大村は「そうか」と言って、静かに腰を下ろした。
「俺、お前の気持ちを全然考えてやれんかったな。すまん」
 私はホッとした。いくらお笑いが好きでも、漫才師なんて柄じゃない。
「わかってくれたらええよ」
「それならそうと言うてくれや」
「だからさっきから……」
「マックシェイクがないから返事を渋ってるんやろ!」
「なんでやねん!」
 私は反射的に大村の胸に右手をぶつけていた。
 はっとしたときには、大村がニヤリと笑っていた。
「さすがやなあ。ボケもツッコミもできるとは……冗談はさておき、これだけは勘違いせんといてくれよな」
 大村が表情を真剣なものに変えた。
「俺はお前やから一緒にやりたいねん。お前以外の奴とやるつもりはない。お前に断られるんやったら、諦めるしかないんや」
 そこまで言われてしまうと、さすがの私もノーとは言えなかった。

 それからの放課後は、大村との練習に費やした。二人とも部活はしていないし、塾にも通っていないため、それなりに時間はあった。
文化祭は受験のある三年生のことを考慮して、毎年五月に行われる。つまり本番まではおよそ九ヶ月。問題は二人の息が合うかより、私のアガリのほうだった。練習では上手くやれても、皆の前で上手くやれるか。はっきり言って、自信はなかった。

 十月に入って、いよいよクラスメイトの前で漫才を披露することになった。その旨を発表したときの皆の反応は決していいものではなかった。大村はともかく、私に関しては「畠山に漫才ができるわけがない」と、皆、口を揃えてそんなことを言った。大村は「気にせんでええ。すぐにわかる」と慰めてくれたが、自信がないことに変わりはなかった。。

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~ Comment ~

こんにちは! 

毎日寒いですね。
私の田舎は先週は降雪量が多く、日中でも氷点下でした。
今は雪は落ち着きましたが、低温が続いています。
サンルームで洗濯物を干していると、洗濯物が湯気を立てて凍っていくんです。すごいでしょう♪

新しいお話、楽しみです!
関西の言葉って、温かいですね。
響きが好きです。
私の地方はいわゆる“ズーズー弁”ですから、通訳が必要かも!

文化祭までの動き、楽しみです♪

kotan さんへ 

 寒いですねえ。と言っても、私の住むところは、kotanさんの住むところに比べると、またまだ温かいほうなんでしょうね。
 洗濯物の話、ビックリですねえ!

 生まれも育ちも大阪なので、この言葉で作品を書くのはとても好きです。

 いつも読みに来てくださってありがとうございます。
 もはやコメントくれるのはkotanさんだけになったので、とても有り難いですし、嬉しいです。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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