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願い集うとき

『願い集うとき』 -樹里の願い-

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(仕事……やっぱり辞めようかな)
 ごった返す終電にウンザリしながら、樹里はそう思った。
 吊革を持つ手がダルい。
 うまくいかない仕事に、心も体もクタクタ。そこへ来て、この混み具合だ。気分が滅入らないほうがおかしい。
 
 四年制の大学を卒業した樹里は、イベント企画の会社に就職した。
 仕事は営業だ。事務がやりたいとは思わなかったし、祭りや人の集まるところ、人と接することが好きな彼女は自分自身自身それに向いていると思っていた。
 ところが実際はそんなに簡単ではなかった。
 通常、入社して二年は、皆、先輩の元で資料作りや書類の整理といったアシスタント業務を行い、仕事のいろはを叩き込まれる。
 その後、小さなイベントの企画から任されることとなり、少しずつ営業マンとしての独り立ちを目指していく。 しかし樹里は、三年と五ヶ月がたった今もアシスタント業務をやっていた。もちろん、何度かは実際に企画もやらせてもらったが、うまくいかなかった。
「とにかく段取りが悪いわね。この仕事は、企画の内容以上に段取りが大事なのよ。段取りが悪いのにイベントが成功するなんてあり得ないからね」
 先輩の言葉にただ黙るしかできなかった。
 同期の連中は皆、曲がりなりにも独り立ちし始めている。アシスタントへ戻されたのは樹里だけだ。
 情けなくて涙が出た。
 ひょっとしたら、自分はこの仕事に向いていないんだろうか。
 最近になり、ようやくそう思い始めた。
 
 就職が決まって実家を出るときに、母の言った言葉を思い出す。
「あなたがあまりに嬉しそうだったから、今まで言えなかったけど……、あなたにはその仕事、向いていない気がするのよ」
 母の意外な言葉に、樹里は腹を立てた。
「やってもみないうちからそんなこと言わないでよ」
 樹里が声を荒げると、母はシュンと小さくなった。
「ゴメン。ただね……辛くなったらいつでも帰っておいで」
 その言葉で、母が自分をどれほど心配してくれているのかを樹里は知り、強く言い過ぎたことを反省した。優しく笑った母の顔は今も忘れない。
 だからこそ、うまくやりたいという気持ちが強かった。
 でもうまくいかない。
 母は樹里以上に樹里のことをわかっていたのだ。

 車内アナウンスが聞き慣れた駅の名を告げ、扉が開いた。
「ゴメンなさい。降ります」
 消え入りそうなか細い声を出しながら、樹里は人を掻き分けてホームに降りた。
 押し潰されそうな状態から解放された安堵で、ふうっと大きく息を吐き出す。
 毎日毎日、人混みに紛れて会社と家の往復。辛い思いをしながら通勤して、わざわざ失敗するために会社へ行っているような気分にさえなる。
 せかせかと改札に続く階段へと向かう他の者に対して、樹里だけがとぼとぼとホームの上を歩いていた。
 さっさと辞めてしまえば、楽になるのかもしれない。でもできれば、もう少し頑張りたい。
 葛藤に苦しみ、心が折れそうになる。
 その時、夜空に輝く一つの星がすっと流れてゆくのが、樹里の目に映った。
 咄嗟に願いを込める。

(例え、ほんの一時でも甘えさせてくれる人ができますように)

 私、何言ってんだろう。
 どうせなら、仕事がうまくいくようにってお願いすれば良かったのに。だからダメなのよね。
 反省の意味を込めて樹里は自分の頭を拳で軽く小突いた。
 心なしか、気持ちが楽になっていた。

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