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「忙しい人たちへ(掌編集)」
忙しい人たちへ①

『小さな交差点から』

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「ねえ、部活は何にするか、決めた?」
 夕暮れの帰り道、私の問いかけに対し、ハルはぶっきら棒に「まだ」と答えた。
 何だか様子がおかしい。
 心なしか歩みも遅い。
 いつもなら並んで歩くはずが、今日は私の少し後ろを歩いている。わざと歩幅を狭くしているようにも見える。
 私とハルは所謂幼馴染という間柄だ。自宅は隣同士。同じ年に生まれ、物心つく前からずっと同じ道を歩んできた。そんな漫画やドラマのような偶然があるのかと疑われるかもしれないが、実際、そうなのだからどうしようもない。
 さすがに手を繋ぐのは次第にやめていったが、幼稚園から始まり、小学校が終わるまで毎朝、一緒に登校した。
 そして中学校になったばかりの今も、それは変わっていなかった。時間が合う日は帰りも一緒だ。
 そんなハルに対して、恋心を抱かなかったのかと聞かれれば、答えはイエスだ。
 男の子に比べて、女の子は精神的な成長が速いと言われるけど、それは私も例外ではない。ハルだけではなく、同年代の男子は皆、幼く見える。
 ハルに限っては、来年、もしくは再来年の体の成長を考慮して買ったであろう、ぶかぶかの制服のせいで、より一層そんなふうに思えてしまう。
「クラスはどう? 一人くらい仲のいい子はできたの?」
「まだ」
 先程と同じでそっけない。
「かわいい子はいる?」
「まあまあ、かな」

 ハルは私のことをどう思っているのか。

「ただの幼馴染。まあ、良くて友達かな」
 
 それがハルの答えだった。
 本人の口からじゃない。小学校五年の時に、クラスの友達から聞いた話だ。
 がっかりしたような、安心したような、何とも言い表せぬ複雑な気持ちになったのを覚えている。
 もちろん、私も周りから尋ねられたことがある。

「弟みたいなもの」

 そう答えた。
 お互い特別な感情なんて抱かずに、今まで通り並んで歩いていくほうがいい。
 そんな気がする。
「なあ……」
 ハルがポツリと呟いて、突然立ち止まった。
 いつもならただ通り過ぎるだけの交差点。馴染みの店があるわけでもないし、友達が住む家があるわけでもない。
 信号さえない小さな交差点だ。
「どうしたの?」
「俺さ……」
 なんだかバツが悪そうに下を向いている。
 やっぱり今日のハルはいつもと違う。
「何?」
 ハルが顔を上げる。初めて見るその力強い目に、思わずドキッとする。
「俺、こっちから帰るよ」
 そう言って、ハルは左側の道を指差す。
 どういうことだろう。
「でもそっちからだと遠回りだよ」
「そんなの、わかってるよ」
 少し怒ったような口調。
「何ていうか……その……」
「何?」
「多少遠回りになってもいいから、俺、自分が選んだ道を歩きたいんだよ」
 思ってもみない言葉にまた驚く。
「帰り道だけの話じゃないんだ。今までは何でもユズと一緒にすることが多かったけど、これからは一人でやってみたいんだ」
 ハルの言っていることを頭の中で整理するのに、少し時間が掛かった。
 しばらくして「そうだったんだ」と、目が覚める思いがした。
 きっとハルは随分前からそんなことを考えていたんだろう。でもどこかで私のことを思って、言い出すことができなかったに違いない。
 私にはわかる。
 ハルってそういう心遣いのできる、とても優しい子なんだ。
「勘違いするなよ。ユズのことが嫌いになったからとか、そんなんじゃないからな。お前とは今まで通りで、何も変わんないから」
 顔を赤くする姿がかわいい。でも……さっきまでと違う。ほんの少しだけど、大きくて、男らしく見える。
 ハルがそう言うのなら、それを止める権利は私にはない。
 みんな、こうして少しずつ大人になっていくんだなと思った。
「いいよ。わかった。でもさ、どうして突然、そんなこと思ったの?」
「そりゃ……」
 口籠ってそっぽを向き、照れ臭そうに人差指で頬を掻く。
「中学に入ったからだよ」
 子供っぽいその答えに、私は思わず吹き出しそうになった。
「笑っただろ?」
「ううん。笑ってない」
「嘘つけ」
「本当だって」
「まっ、いいけど……それじゃ、先に帰るな」
 ハルは軽く手を上げた後、私に背を向けて少し早足で左側の道を歩いていった。
 振り返ることもせず、どんどん前へと進み、瞬く間にその姿が小さくなる

 寂しい気持ちがないと言えば、嘘になる。でもそれ以上にハルの成長、決断がとても嬉しかった。
 二人の関係は何も変わらない。
 きっと、その言葉に嘘はないだろう。
 私も見習わなくちゃいけない。ハルに置いてけぼりを食わないように、自分の歩く道を一生懸命前に進もう。
 私はハルとは反対の右側の道を進み始めた。
 少し遠回りになるけれど、それでもいい。
 だって、この道は私が選んだ道だから。

<了>

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~ Comment ~

戻って来て下さって、ありがとうございます。 

覚えていらっしゃるでしょうか?

突然作品が拝読できなくなってしまって、とても残念な気持ちでいました。
時々訪問していたのですが、パスワードが必要で・・・
でも戻って来て下さって嬉しいです!

作品を拝読しました。
ちょうど思春期になって、心も体も成長しているんですね。
男の子に、自立が始まりましたね~♪
お互いの意識が、やはりただの幼馴染ではないと感じられます。
女の子って成長が早いから、大人目線でいられる・・・そこがちょっと甘酸っぱい。

久しぶりに、そして素敵な作品に出逢えて嬉しいです。
また遊びに来ますね♪

kotanさんへ 

kotanさんのこと、もちろん、覚えていますよ。いつも読みに来てくださっていましたもんね。
こちらの都合で勝手に閉鎖ししてしまって、ゴメンなさい。「ありがとうございます」なんて言われると恐縮してしまいます。
あれからもずっと来てくれていたんですね。とても嬉しいです。

ちょうどこの年頃ですよね。子供から大人へと変わり始める時期です。
女の子と一緒にいるのが恥ずかしいと思ったり、格好つけたりして。
その辺りの微妙な心の変化を、久々に書いてみたくなっちゃいました。

実は今、別の投稿サイトで活動していて、こちらにもそのまま作品を映してこようと思ったんですね。
あれから追加したのは、このカテゴリー『忙しい人たちへ』のところに入っている短編がほとんどです。
前ほど、バリバリという訳にもいきませんが、もし良かったら遊びに来てください。

本当にありがとうございました!
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