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「それでも私を愛してくれますか」
第二章 ヘヴンズガール

『それでも私を愛してくれますか』 第二章 ヘヴンズガール -6-

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 決して映像には見えなかった。一人の女の子が間違いなく僕の目の前に立ち、微笑みを浮かべている。
「こんにちは」
 しばらく言葉が出なかった。千夏が首を傾げて遠慮がちに尋ねる。
「あの、座ってもいいですか?」
「えっ、ああ……」
 僕はようやく我に返った。
「どうぞ」
 千夏がゆっくりと腰を下ろしていくと、それに合わせてお尻の下に椅子が現れた。
「驚かせてごめんなさい。千夏です」
「すごいね。本物みたいだ」
「初めての人はみんなそう言う」
「あの……手を見せてもらってもいいかな?」
 千夏がゆっくりと右手を差し出し、掌を僕に見せた。二十一歳という若さに相応しい皺のない綺麗な手だ。
「触ってもいいかな?」
 知らぬ間にずうずうしいことを頼んでいた。千夏が口元を緩めた。
「いいよ」
 恐る恐る右手を伸ばしたが、彼女の手に触れることはできず、僕の手は空を切った。何度か試してみたが、結果は同じ。それを見て、千夏が子供のようにキャハハと甲高い声で笑った。
「ごめんね。『お話だけ』のコースだから触ることはできないの。良かったらコース変更する?」
 どうやら僕は千夏にからかわれていたようだ。
 
 信じ難いがやはり彼女はコンピュータにより映し出された映像のようだ。動きの一つ一つがリアルで乱れもなく、無邪気に見せる笑顔は本物の女の子と変わりがない。
「ううん。今日は話すだけでいいよ」
「そう。じゃあ、ゆっくりお話しよ。私の自己紹介は済んだから、あなたの名前を教えて。歳もね」 
「俺は克己、二十七歳」
「克己さんか。私より六つも年上なんだね。今日は会社帰り?」
「そう」
「お仕事は何をしているの?」
「普通の会社員だよ」
「ふーん、そうなんだ。普通の会社員っていう職種があるんだ」
 千夏は口をぷくっと膨らせた。
「ねえ、ちゃんと教えてよ」
「ごめん、ごめん。パソコンやコピー機、紙やペンなんかの事務用品を販売したり、レンタルしている会社で働いているんだ」
「じゃあ、パソコンには詳しいの?」
「俺の仕事は営業だから基本程度のことだけ。専門的なことは別のスタッフがいるから、そっちに任せている」
「そっか。私、パソコンとかほとんど触ったことがなくて……」
 千夏が眉を下げて、照れ臭そうに舌を出した。
「そうなんだ。興味はあるの?」
「うん。やってみたい」
「じゃあ、今度教えてあげるよ。少しくらいなら俺でも大丈夫だから」
「本当に?」
「うん」
 無邪気に笑ってキーボードを叩く素振りをする彼女を見て、思わずそんな約束をしてしまったが、この世界でそんなことができるのか。
「千夏ちゃんの趣味って何?」
「うーんとね」
 千夏は人差し指で口元を押さえ、大きな目を上に向けた。一つ一つの行動が憎らしいくらいかわいい。男を喜ばせる仕草というのをよく知っているようだ。
「趣味って言えるかわからないけど、ネイルアートは好き! 見て」
 千夏が両手の指を揃えて僕に見せた。紺色に塗られた爪に、金色の星が点々と散りばめられている。左手の薬指には三日月がひとつ浮かんでいた。
「かわいいね」
「ありがとう」
「他には? ゲームとかはするの?」
 千夏が目を丸くした。
「ゲームってテレビゲーム?」
「うん」
「ゲームはしないよ」
 意外だった。商売上もっとオタク連中が気に入るような答えをするものだと思っていたが、そうでもないらしい。支配人が言ったように、女の子たちが「心」を持っているというのは本当のようだ。
「他には?」
「カラオケは好き」
「へえ、誰の歌を唄うの?」
「浜田のぞみとか」
 僕の知らない歌手だった。
「うーん、どんな歌?」
「『愛してるーなんてとてもー』……って、聞いたことない?」
 千夏が身振り手振りを交えながら唄ってみせた。
「ああ」という僕の答えに彼女の顔がぱっと明るくなった。
「知ってる?」
「ううん。知らない」
 僕が首を横に振ると、千夏がずっこける振りをした。
「ちょっと! こっちは恥ずかしいのに振付けまでやったんだからね」
「ごめん、ごめん」
 千夏とのやり取りに自然と笑いが込み上げて来た。『活動的で話し好きな性格』か。彼女を選んだのは正解だった。
「ねえ、克己さんの趣味は?」
「俺の趣味はね……」
 
 そのまま話が続いたが、それほど深い話はしなかった。世間話程度だ。
 最近起こった事件や天気の話をしても、ちゃんと伝わる。彼女たちは最新の情報をどうやって手に入れているのだろうか。
 ただそんなことはどうでも良かった。他愛のない話をして笑ったり、驚いたり、それが単純に楽しかった。「好きだ」とか「付き合いたい」といった現実的なことが無関係な場所だからこそそんな気持ちになれたのかもしれない。



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~ Comment ~

NoTitle 

作り物のような、現実のような、不思議な世界ですね。

でも、楽しい時間が過ごせたのは、良かったのではないでしょうか。

損得の無い楽しさのような感じがします。

けい さんへ 

そうですね。
一種のアトラクションみたいなものです。

あー、楽しかった。という感じですね。
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