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【  2017年04月  】 

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『赤い糸をたどって』 第二十一回

赤い糸をたどって

2017.04.27 (Thu)

  カフェに着くと、小谷は迷う様子もなく、一番入口に近い空いた席に腰掛けた。「どこへ座るか」なんて悩むことさえ彼女には無駄なんだろう。ウェイトレスが水を持ってくるなり、小谷は「私、ホットコーヒーで」と素早く注文を済ませる。「春見さんは?」と急かされてしまい、「メニューお願いします」と言える雰囲気ではなくなった。仕方なくホットコーヒーを頼むことにした。「ゴメンなさいね。あまり時間がないもんだから、つい...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第二十回

赤い糸をたどって

2017.04.25 (Tue)

  若槻はわざとらしく、「はじめまして」と頭を下げてくる。「あっ、はじめまして」と俺もそれに応える。もはや気まずさのようなものはない。一応、自己紹介カードを交換する。「まさか春見さんがブーケトスの会員だったなんて、思ってもみませんでした」「俺だって同じだよ。だって若槻さんはまだ結婚とか考えているようには見えなかったしさ」 本当は知っていたけどね。「そんなこと言ったらまた牛島さんがうるさいでしょ?」「...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十九回

赤い糸をたどって

2017.04.23 (Sun)

  パーティの日がやってきた。事前に郵送されてきた地図を頼りに会場へ向かった。 とりあえず一人でもいいので、つながりを作っておきたい。 会場である「憩い」という名の喫茶店は駅ビルの地下にあった。壁に赤いレンガタイルを張った昔ながらの造りをしていた。 開けっぱなしのドアの内側に『本日貸し切り』の札が掛かっている。午前中は、俺の参加する二十代から三十代前半組で、午後からは三十代後半から五十代の組に別れて...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十八回

赤い糸をたどって

2017.04.21 (Fri)

  待ち合わせに使ったロータリーに車が到着した。 山上が「今日はどうもありがとうございました」と笑顔を見せた。それを見ても、「もういいか」とはならなかった。「山上さん」「はい」「あれはあんまりなんじゃないですか?」「何のことですか?」 山上は自分のしたことに対して悪気を感じている様子はない。「僕に断りもなしに御両親と会わせたことです」「ああ、そのことですか。あまりに突然で心の準備をする暇もなかったで...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十七回

赤い糸をたどって

2017.04.19 (Wed)

  橋添のスケジュールに合わせるため、結局、大した話をすることもなく、スイーツを食べただけで帰ることになった。 ケーキ三つを一気に胃の中へ放り込んだため、少し気分が悪かった。車に乗り込み、シートベルトを締めると、思わず「おえっ」という声が出そうだった。「橋添さんの家の近所まで送りますか? それともどこかの駅がいいですか?」「じゃあ、F駅でお願いします。そこまで彼氏が迎えに来てくれるので」「了解です」...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十六回

赤い糸をたどって

2017.04.17 (Mon)

  山上のメールは以前に比べると少しは減り、一日に二回程度になった。このくらいのペースなら苦もなく続けられるというものだ。 そこへ橋添からのメールが一通紛れ込んできた。『今度の日曜、休みがとれたので会いませんか?』 実を言うと、少し前に山上から「次の日曜日も会いたい」というメールをもらっていたが、まだ返事はしていなかった。 橋添とはなかなか休日が合わないし、これを逃すと次はいつになるかもわからない。...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十五回

赤い糸をたどって

2017.04.15 (Sat)

  それを皮切りに、朝、昼、夕方、そして夜と、最低でも一日四回は山上からメールが届くようになった。内容はと言えば、挨拶と雑談がほとんどだった。四六時中ケータイと睨めっこしているわけではないが、さすがにこれだけ頻繁に送って来られると辛いものがあった。婚活の一つとして割り切るつもりだったが、やはり言うべきことは言ったほうがいいだろう。『山上さんに一つお願いがあります。メールを送ってきてくれるのはとても嬉...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十四回

赤い糸をたどって

2017.04.13 (Thu)

 「他の男性に会われるときもやっぱり車なんですか?」「そうですね。大抵は」と、山上は前を向いたまま答えた。その横顔をじっと見た。 とり立てて美人でもなく、ブスでもない。ごく普通のどこにでもいる女性だ。「運転が好きだからですか?」「それもありますけど……」 そう言ったまま、山上が黙り込む。「どうかしましたか?」「あっ、いいえ。あの……笑わないって約束してくれますか?」 何が言いたいのか、さっぱりわからなか...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十三回

赤い糸をたどって

2017.04.10 (Mon)

  橋添の案内してくれたのは、「ぷろヴぁんす」という名の店で、白い壁に赤茶色の洋瓦の屋根を乗せたカワイらしい外観をしていた。店先のプランターに植えられたオリーブの木に木製の縁がついた黒板がぶら下がっていて「本日のシェフのオススメは心も体も温まるまろやかパンプキンシチューです』と白チョークで書いてある。女性ウケしそうなので、別の誰かを連れてきてもいいなと、 橋添には口が裂けても言えない考えが頭を横切っ...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十二回

赤い糸をたどって

2017.04.08 (Sat)

  有料オプションAへの申し込み効果はちゃんと出た。正月休みが終わり、仕事が平常業務へと落ち着き始めた頃、続々と女性会員の紹介状が届くようになった。年齢は二十歳から四十歳までと幅広いが、有難いことに俺のストライクゾーンである、二十代後半から三十代前半が特に多かった。 遠方からの申し込みもいくつかあった。新幹線やフェリー、あるいは飛行機を利用しなければ会えないような所だ。申し込みをしてくれたのは嬉しい...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十一回

赤い糸をたどって

2017.04.06 (Thu)

  そこで冬月が店員呼び出しボタンを押してくれた。 意外と気が利く奴だ。「結婚願望のない女なんて今はいっぱいいるよ」 冬月が決め台詞のようにそう言って、四杯目のビールを飲み干すと、ちょうどいいタイミングで店員がやってきた。冬月は「生」と自分のお替りだけ注文して、「最近は……」と話を続けた。 別に俺に気を利かせてくれたわけではなかったようだ。立ち去ろうとする店員の背中に、俺も慌てて追加のビールを注文した...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第十回

赤い糸をたどって

2017.04.04 (Tue)

  映画館へは俺の車で行くことにした。軽より大きい小型の普通車であまり広くはないが、一応掃除だけはしておいた。車がステータスの一つだなんて、無理して高級車を買う奴もいるが、俺はそうは思わない。特に婚活中なら尚更だ。「今の給料ではせいぜいこの辺りが身分相応なんです」と、それとなくアピールしておくほうが後で楽だ。 待ち合わせは、沢口の自宅の最寄り駅に午後一時。昼食は各自済ませてくることにした。 前回と同...全文を読む

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『赤い糸をたどって』 第九回

赤い糸をたどって

2017.04.02 (Sun)

  十一月も終わりに近づく頃には、高崎を含めた今月の申し込み相手九人全員からのお断りの連絡が届いた。手元にあるのは沢口の紹介状だけで、先月から状況は何も変わっていないことになる。 沢口には時折メールを送ってみてはいるが、大抵二言、三言でお仕舞いで、彼女のほうから進んでメールを送ってくることはない。やはり彼女には結婚するつもりなんてないのかもしれない。 沢口のことを非難している場合ではない。このままで...全文を読む

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