更新履歴

さわりを読む▼をクリックすると更新された内容の冒頭部分がご覧になれますので、久しぶりのご訪問の方は
こちらで未読・既読のご確認ができます

日付別の更新チェックはカレンダーの日付をクリック ▼

【  2015年11月  】 

『正義の味方』

忙しい人たちへ(掌編集)

2015.11.30 (Mon)

  駅からやや離れた通りに一軒の喫茶店がある。 店の名は『ザ・ヒーロー』 店内には、マスターの趣味である、特撮ヒーローのフィギュアやグッズがガラスケースに入れられて並んでいる。壁には大型テレビが据え付けられ、常時ヒーローものの映像が流れている。 地元のヒーローオタクはもちろん、はるばる遠方からやって来て、仮面ライダーの等身大フィギュア、並びにマスターと写真を撮って帰る者もいる。 産まれた時からこの街...全文を読む

▲PageTop

『UFOを見に行こう』

忙しい人たちへ(掌編集)

2015.11.28 (Sat)

  脚立にデジカメをセットする。角度はやや上向きにし、空を狙う。場合によっては脚立ごと移動する必要はあるが、最低限の撮影の準備は整った。 この丘でUFOを見たという話を聞いたのが四日前。三組の永瀬の証言だ。 俺としては、この話をくだらないデタラメで終わらせるわけにはいかなかった。 なぜなら、俺はUFO研究会の会長だからだ。 授業が終わると、急いで自宅に帰り、デジカメと三脚を持って丘に上がった。「今、...全文を読む

▲PageTop

『約束を守りたくて』

忙しい人たちへ(掌編集)

2015.11.27 (Fri)

 「わかりました。それで、提出のほうなんですけど、いつ頃がよろしいでしょうか?」 少し緊張して、受話器の向こうの相手からの返事を待つ。『うーん。そうですね。できるだけ早くでお願いします』 答として一番厄介なパターンだ。すぐに取りかかったほうがいいのか、それとも本当にこちらのできる範囲の最速なのか。曖昧にすると危険なので、こういう場合はハッキリと期限を聞くのがベストだ。「明日でも大丈夫ですか?」『ああ...全文を読む

▲PageTop

『アイドルを拾いました』

忙しい人たちへ(掌編集)

2015.11.26 (Thu)

  バイトの帰りに、いつも抜け道として横切る公園がある。 ジョギングコースになるくらいの大きな公園のため、外周をぐるりと回って歩くよりずっと時間の短縮になるのだ。 今日も例外なく、そこを利用する。 夕食時ということに、数日前からの急な冷え込みが手伝って人気はほとんどなかった。 そんな中、茶色のコートに身を包み、寒そうにベンチで背中を丸めている女の子を見つけた。歳は僕より少し年下の十代後半くらいだろう...全文を読む

▲PageTop

『小さな交差点から』

忙しい人たちへ(掌編集)

2015.11.21 (Sat)

 「ねえ、部活は何にするか、決めた?」 夕暮れの帰り道、私の問いかけに対し、ハルはぶっきら棒に「まだ」と答えた。 何だか様子がおかしい。 心なしか歩みも遅い。 いつもなら並んで歩くはずが、今日は私の少し後ろを歩いている。わざと歩幅を狭くしているようにも見える。 私とハルは所謂幼馴染という間柄だ。自宅は隣同士。同じ年に生まれ、物心つく前からずっと同じ道を歩んできた。そんな漫画やドラマのような偶然がある...全文を読む

▲PageTop

『そしてまた』

忙しい人たちへ(掌編集)

2015.11.20 (Fri)

 「オーライ、オーライ」 作業服を着た男の誘導で、トラックの荷台に乗せられたショベルカーが道路に向かってゆっくりと降下を始める。辺りに響き渡るタラップの軋む音が、その重さをよく伝える。重機とはよく言ったものだ。 これから、私のとって格別の思い入れのある建物が解体される。 建築士になることが夢だった私は、大学卒業後、決して大きくはないが、『西原建築事務所』という、地元ではそれなりに名前の売れた建築家の...全文を読む

▲PageTop

『名探偵と呼ばないで』 -終-

名探偵と呼ばないで

2015.11.17 (Tue)

  テレビを見たり、会話を楽しんだりと、殺人犯に狙われているかもしれないことを忘れたように皆、騒いでいたが、午前零時を迎える頃には眠気を訴える者が出てきた。日中のスキーで疲れているのだろう。「全員が起きている理由はありませんから、交替で仮眠をとりましょう。オーナー、この階に布団や毛布の予備はありますか?」 俺の質問に、オーナーが「ございます」と丁寧に答えた。「では僕のグループとオーナー夫人のグループ...全文を読む

▲PageTop

『名探偵と呼ばないで』 -2-

名探偵と呼ばないで

2015.11.16 (Mon)

  一ヶ月前、『リアルノベラー』という商品を家電量販店で購入した。メーカー希望小売価格九万八千円のところを、限定五台に限り九万円で販売するというので、会社をサボって開店の二時間前に店頭に並んだ。 発売前から目を付けていたが、高額ゆえに手が出せずにいたのだ。会計を済ませてレジで商品を受け取った瞬間、誰にも見つからぬよう、拳をギュッと握った。『リアルノベラー』は、読者自身が主人公になって、小説の世界に入...全文を読む

▲PageTop

『名探偵と呼ばないで』 -1-

名探偵と呼ばないで

2015.11.15 (Sun)

 「殺人予告だって!」 ロビーに集まった、ほぼ全員が声を揃えた。 「どうしてそういうことを早く言わないんだ」 眼鏡を掛けた小太りの中年男に責められ、初老の男性が「申し訳ありません」と深く頭を下げる。このペンションのオーナーだ。「ただのイタズラだと思っておりましたし、皆様に余計な心配をお掛けすまいという配慮のつもりでした」 オーナーがもう一度頭を下げると、隣にいる夫人も黙ってそれに倣った。「それがわか...全文を読む

▲PageTop

『夏に恋して、その結果』

初夏恋慕

2015.11.14 (Sat)

 ※短編「初夏恋慕」の十年後を描いたものです。本編をお読みいただかなくても楽しめますが、読んでいただけるとより楽しめます。「夏、これから毎日、俺のために味噌汁を作って欲しい」 今時、こんなこと言わないよな。 やっぱりここはストレートにいくほうがいいか。「夏、俺と結婚して下さい」 うーん。在り来たりかな。 明日、僕は恋人の夏にプロポーズをする。婚約指輪は随分前に買ってある。 今、部屋でその予行演習をし...全文を読む

▲PageTop

『あなたの声が聞こえる』

忙しい人たちへ(掌編集)

2015.11.13 (Fri)

 『M市民病院まで行って下さい。できるだけ早くお願いします』 あらかじめ、そう書き記しておいた紙をタクシーの運転手に差し出した。運転手は訝しげな表情で私をちらりと見て、「M市民病院ね」と独り言のように呟いてから車を発進させた。「今の時間帯なら三十分はかかるかなあ……誰か病気か怪我でもされたんですか?」 病院に急ぐ用事と言えば、それしかないだろうとデリカシーのない運転手に少し腹が立ったが、私は何も言い返...全文を読む

▲PageTop

『青き夢の果て』

忙しい人たちへ(掌編集)

2015.11.12 (Thu)

  夢が終わった。 ずっと想い描き、恋い焦がれ、いつかは掴めると信じていた俺の夢が……。 テーブルの上にはビールの空き缶、床には音楽雑誌と楽譜の山、思い出の写真はガラスの破片の下に埋もれている。 荒れ果てた部屋の中では、メタリックブルーのエレキギターでさえ、光沢を失ってくすんで見えた。 夢の始まりは高校三年生の時。クラスメイトのセージとタイゾーとバンドを組んだ。当時流行していたビジュアル系を真似て、髪...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -終-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.10 (Tue)

 『紗江へ お元気ですか。拓郎です。 突然、家を飛び出してしまったうえに連絡もせず、心配しているというより、きっと怒っているでしょうね。迷惑を掛けたことはよくわかっているので、それは素直に謝ります。 ごめんなさい。 でも俺にも多少は言い分があるので聞いてもらえますか。  紗江には話していなかったのですが、家出をする一カ月前、俺は会社から別の部署への異動を命じられました。そこはリストラ対象者ばかりを集...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -8-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.09 (Mon)

  数日後の日曜日の午後。 手紙に同封されていた地図を頼りに、拓郎は一軒の家を目指していた。 拓郎のある申し出に対して、今回ばかりはさすがの高峰も首を横には振らなかった。それどころか、「是非そうしてあげて下さい」と、むしろ前向きだった。 その辺りは随分前に住宅地として確立した地域らしく、どちらを向いても瓦屋根を乗せた昔ながらの古い日本家屋が並んでいた。 拓郎の目的の家も例外ではなく、外壁には所々雨垂...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -7-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.07 (Sat)

  夕食を終えた拓郎はテラスへ出た。暑過ぎず、寒過ぎずのちょうどいい気温で、風が心地良い。据えられた木製チェアに腰掛けて、虫たちの合唱に耳を傾ける。ここのところの拓郎の日課だ。 そんなふうにして自然の中に身を置いていると、悩みなどどうでも良くなってくるから不思議だ。 自分がなぜここにいるのか。 これからどうするべきなのか。 考えなくてはならないことを放棄しても許されるんじゃないかと錯覚してしまう。「...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -6-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.06 (Fri)

  眉間に皺を寄せる清吾の目を小さな手が塞いだ。「だあれだ?」 幼い男の子の声だ。「うーん。達彦だな?」「当たり!」 達彦は清吾の目から手を離して不思議そうな顔をする。「どうしてわかったの?」「じいちゃん、背中に目が付いているからな」「えっ? 本当に?」 達彦は大きく目を見開いて、清吾の背中をまじまじと見つめる。「本当さ」「嘘。どこにもないよ」「じいちゃんの秘密兵器だからな。今は隠しているんだ」 達...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -5-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.05 (Thu)

  結婚のきっかけとなったのも、また紗江の言葉だった。「今、付き合っている人とは、そのうち結婚するつもりなのかってお母さんに聞かれちゃった」 交際期間が三年目に差し掛かった秋。公園のベンチに腰掛け、二人で沈んでいく夕陽を眺めていた時のことだ。  それまで結婚の話など一度もしていなかったため、拓郎にとっては寝耳に水だった。「私、この前の誕生日で二十五になったでしょ? それに拓郎との付き合いも結構長いし...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -4-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.04 (Wed)

 「拓坊の奴、嫁さんと別居中らしい」「あら、それは穏やかじゃないわね。喧嘩?」 志乃は視線を本に向けたまま、返事をした。このように清吾は、拓郎が二人にとって共通の知り合いであるかのように志乃に話す。志乃も構わず、清吾に話を合わせる。「まあ、拓坊が怒るのも無理はない。この嫁さんは働きにも出ない、家事もロクにしないと書いてある。頭に来て、『出ていけ』とでも言ったんだろう。俺は安心したよ。拓坊はもっとなよ...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -3-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.03 (Tue)

  ヒョコヒョコと水面に浮かぶウキを眺める清吾たちのそばに、新たに仲間がやってきた。男は軽く会釈をすると、少し離れた場所に道具を下ろして準備を始めた。二人より少々年上の男は、老眼のためか、目を細めながら釣り糸を結んでいる。視線は下のままで清吾と政人に話し掛けてくる。「あんたら、久しぶりだな?」「ここのところ、暑い日が続いていたんでね。休んでいたんだ」 政人が男の問いかけに返事をした時、清吾のウキがす...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -2-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.02 (Mon)

 「それじゃ、今日もやるとするか」 清吾の呼びかけに「おう」と景気良く応えた政人は草履を脱いで、そのまま縁側から家の中へ上がり込んだ。玄関を素通りして直接庭へと回るのは長年やってきたことだ。もちろん、政人だからこそ許されている。 畳の上に置いた将棋盤を挟んで、二人は向かい合って座った。ガラガラと派手に鳴る駒の音が聞こえたのか、志乃が二人分の麦茶を盆に乗せてやってきた。「政人さん、いらっしゃい」「お邪...全文を読む

▲PageTop

『親愛なるあなたへ』 最終章 親愛なるあなたへ -1-

最終章 親愛なるあなたへ

2015.11.01 (Sun)

  いつものように自分宛ての手紙を手にして、拓郎は事務室の椅子に腰掛けた。 今日届いたものは三通。 一番初めに封を切ったのは、就職活動中の大学四年生、山崎晴信からの手紙だった。すでに八月も終わりだというのに未だに内定はゼロで、暑い中スーツを着て歩き回っているという話だ。就職戦線は拓郎が大学四年生だった頃とは比べ物にならぬほど、厳しいものになっているらしい。 拓郎自身は、東洋保険から内定をもらった時点...全文を読む

▲PageTop

前月     2015年11月       翌月

Menu

最新記事

最新トラックバック

カテゴリ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード