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【  2015年10月  】 

『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -13-

第四章 理想に向かって

2015.10.31 (Sat)

  数日後、郵便局へ行く富永の車に、拓郎は便乗することにした。久しぶりに自宅へ帰ってみようという気になったのだ。「家に帰らないのは柳瀬君くらいだ」という諏訪の言葉や結梨の手紙で心動かされたのは言うまでもない。 駅前で拓郎を下ろした富永は「ゆっくりしておいで」と屈託のない笑顔で見送ってくれたが、当の本人はそんな穏やかでのんびりとした気分ではなかった。 富永がいなった途端、急に心細くなり、「やっぱり引き...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -12-

第四章 理想に向かって

2015.10.30 (Fri)

  拓郎の元に、待ちわびていた結梨からの手紙が届いた。「夫との話し合いもうまくいき、家族三人で楽しく暮らせるようになりました」 そんな知らせであって欲しい。心からそう願っていた。『柳瀬さんへ お元気ですか。こうして手紙を書くのも随分と久しぶりのような気がします。 あれから夫とも話をしました。 娘のときのように、自分がこれからどうしていきたいかをありのままに伝えたつもりです。 もし夫から何かしらの反論...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -11-

第四章 理想に向かって

2015.10.29 (Thu)

  結梨が義伸の帰りを待ち続けて、すでに三日が過ぎた。毎日午前0時手前になると、『今日も帰れない。先に寝てくれ』とメールが届く。栗原と同じで、使い回しの文章に違いない。 面と向かって話をするつもりなのだが、恵梨奈とは違って必ず帰ってくるかどうかわからないところが厄介だ。今日も帰って来ない可能性は充分にある。もしかすると何かを察して、わざと家から遠ざかっているのかもしれない。 結梨はチラリとそんなこと...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -10-

第四章 理想に向かって

2015.10.28 (Wed)

 「柳瀬さん、今月の愛文通信から文通して欲しい人がいるのよ」 いつかのように社長室へ呼ばれた拓郎は、また高峰から直々に仕事を依頼されることになった。結梨の件がまだ解決していないというのに、よほど当てにされているのだろうか。嬉しいやら悲しいやら、複雑な心境だった。「お前は不要だ」とリストラされたあの頃に比べると、随分と出世したものだ。 高峰は付箋を貼ったページを開いて、拓郎へと差し出した。「一番上の右...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -9-

第四章 理想に向かって

2015.10.27 (Tue)

  結梨の生活はまた元へと戻っていた。 恵梨奈の帰宅を玄関先で待つのも、手料理もやめた。あれほど届いていた男たちからの手紙も来なくなった。 だからと言って、再び栗原に連絡をしたり、愛文通信で新しい文通相手を募集しようとも思わなかった。もはやそんな気力さえ失せてしまったのだ。 午後二時の昼ドラを見終えると、結梨はポストの中身を確認するため、外へ出た。郵便に対しても何の楽しみもなくなっていた。ポスト裏面...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -8-

第四章 理想に向かって

2015.10.26 (Mon)

  しばらくして玄関のドアが開くと、結梨は反射的に立ち上がった。玄関で母親が待っているという予想外の事態に、恵梨奈は目を丸くした。というより、ギョッとしたという表情で、家の中に入ろうともせず、ドアを半分開いた状態で立ち尽くしていた。「……おかえり」 少し上ずった結梨の声が合図だったかのように、恵梨奈は再び動き出した。結梨から目を逸らし、冷たい表情で靴を脱ぎ揃えると、素知らぬ顔で二階へ上がろうとした。「...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -7-

第四章 理想に向かって

2015.10.25 (Sun)

  結梨が拓郎への手紙に自分の気持ちを綴ってからも、岩城家は何も変わっていなかった 恵梨奈は家へ帰ると、自分の部屋に直行で、同じ屋根の下にいながら、結梨と顔を合わすことはない。 義伸は家に帰らないか、帰ったとしても結梨が眠った後で、出ていくのは結梨が目を覚ます前だった。 結梨自身も義伸と顔を合わせようと努力しなかった。「時間が合わないから」と言い訳できることにむしろ安心していた。 そこへ拓郎から新た...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -6-

第四章 理想に向かって

2015.10.24 (Sat)

 「柳瀬君ってさ、恋人とかいないの?」「ゲホッ!」 昼食時の社員食堂、隣の席に座る諏訪の意表をついた質問で、拓郎の喉にカラアゲがつかえた。拓郎は慌てて水を飲み、強引にカラアゲを胃の中へ落した。「ちょっ、ちょっと大丈夫?」「大丈夫です」と返事をしたかったが、うまく声が出ない。拓郎は右手を上げて「待った」の意思表示をした。何度か咳払いをして、「あーあー」と声の調子が元に戻るのを待った。「何ですか? 唐突...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -5-

第四章 理想に向かって

2015.10.23 (Fri)

  次に気が付いた時には、結梨はホテルのベッドでいつものように栗原を受け入れていた。 始めはほんの軽い気持ちだった。「一度会って話してみませんか」という栗原の言葉に、お茶だけのつもりで会うことにしたのだ。 他の者には飾り立てた嘘だと簡単に見抜ける台詞でさえ、孤独な結梨には気持ち良く心に響くものだった。そして外に女を作り、香水の匂いをさせながら何もなかったような顔で帰ってくる義伸への腹いせでもあった。...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -4-

第四章 理想に向かって

2015.10.22 (Thu)

  どう考えても体を売る相手を探しているようには思えなかった。仮に男たちのほうが結梨の体を目的にしていたとしても、こんな手紙をもらえば、その気も失せるというものだ。この手紙を高峰に見せ、「売春の事実はないと思われます」と報告すれば、任務は終わる。 拓郎は便箋を封筒に仕舞い、受話器を手にした。社長室の内線番号「001」を入力し始めたが、二つ目の「0」で受話器を元に戻した。 考えてみると、証拠は何もない...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -3-

第四章 理想に向かって

2015.10.21 (Wed)

 『岩城 結梨さんへ はじめまして。 愛文通信を見てお手紙を書かせてもらいました、柳瀬拓郎と申します。 年齢は二十七歳、保険会社に勤める男です。 岩城さんは専業主婦になり、十七年ですか。それなら家事のスペシャリストですね。きっと料理もお上手なんでしょう。得意な料理は何ですか。 僕の妻も専業主婦で、結婚したばかりの頃は(と言ってもまだ二年目です)随分と手の込んだ料理が食卓に並んでいたのですが、どこで覚...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -2-

第四章 理想に向かって

2015.10.20 (Tue)

 「浩太はあなたに似たのね。だってそうでしょ? もし父親の和樹に似たのなら、あんなに出来が悪いはずありませんから」 黒髪に紛れてぽつぽつと白髪の混じり始めた姑が、溜息と共に鋭く目を光らせた。(どうしてそんなふうに言われなくてはならないのか) 苛立ちを感じながらも、岩城結梨はそれを口にすることはしなかった。「浩太のことはお前に任せると言ったはずだぞ。アイツが家に寄り付かないのはお前のせいじゃないのか?...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第四章 理想に向かって -1-

第四章 理想に向かって

2015.10.19 (Mon)

 「柳瀬君、社長が呼んでるわよ」 内線電話の受話器を戻した諏訪の台詞が拓郎を緊張させた。「呼んでいるって、社長室にですか?」「そう」 愛文乃会の社長である高峰は、それほど畏まらなくてはならぬ相手ではないことは拓郎もわかっている。しかし「社長」といった役職名を聞くと、自然に心も体も強張る。会社員だった頃の悪い癖だ。以前勤めていた東洋保険は大きな会社だったため、社長に会ったのは有名ホテルで行われた入社式...全文を読む

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