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【  2014年03月  】 

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『親愛なるあなたへ』 第三章 信じることから始める -8-

第三章 信じることから始める

2014.03.30 (Sun)

 「そこです」 康史が指差したのは、ありふれた二階建ての一軒家だった。そこを数メートル通り越したところで、拓郎は車を止めた。「俺はここで待っているから、行ってこいよ」「えっ?」 康史が表情に不安の色を浮かべる。出会ったばかりの頃の、今にも泣き出しそうな情けない顔に戻っている。「もう逃げるなんてこともしないだろうしさ。そうだろ?」 拓郎の念押しに康史は、「はい」と小さな声で自信なさげに返事をした。「康...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第三章 信じることから始める -7-

第三章 信じることから始める

2014.03.28 (Fri)

  拓郎と康史は近くの喫茶店に入った。「どうだ? 本当に来ただろう?」 拓郎の問いかけに康史は「はい」と返事をしたが、視線は注文したコーラの泡に注がれていた。拓郎と目を合わせるのを意図的に避けているようだった。他のテーブルに料理や飲み物が置かれたり、他人が席を立ったりといった何かの物音がする度に、キョロキョロと辺りを見回してまるで落ち着きがない。「正直に言うと……」 小さな声だった。康史の声を聞き漏ら...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第三章 信じることから始める -6-

第三章 信じることから始める

2014.03.26 (Wed)

 「それは禁止だと入社前にお話ししなかったかしら?」「もちろん、覚えています」 康史と直接会って話をしたいと言う拓郎の申し出を聞いた高峰は、穏やかだった表情を一変させた。 康史の状況は充分に説明した。今、彼が何を必要としているのかがわからない高峰ではないと拓郎は信じていた。そして企業の長として、禁止事項を許可できないこともわかっているつもりだった。 しかし康史のためにも簡単に諦めるわけにはいかなかっ...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第三章 信じることから始める -5-

第三章 信じることから始める

2014.03.24 (Mon)

  拓郎から新たに送られてきた手紙の冒頭を読んだ途端、康史は一瞬、眩暈を感じた。『残念ですが、松枝さんとはお友達にはなれません』 もちろん、この一文で終わりというわけではない。続きはあるが、そこには悪いことしか書かれていない気がして、読むのが怖くなった。手が少し震えている。康史は手紙を折り畳んで、テーブルの上に置いた。前回と同じく捨てるところまではできなかったのだ。 手紙のことを忘れるため、携帯用ゲ...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第三章 信じることから始める -4-

第三章 信じることから始める

2014.03.22 (Sat)

 『松枝さんへ お元気ですか。なかなかお返事がいただけないので、こちらからもう一度手紙を送らせていただくことにしました。 この前の手紙の内容についてですが、もし松枝さんが答えたくないというのであれば、無理に答えなくてもいいです。誰にだって、人に話したくないことや知られたくないことがあるはずですから。 前回のことは気にせず、松枝さんの思いつくままに手紙を書いて下さい。 趣味であるゲームの話だとか、好き...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第三章 信じることから始める -3-

第三章 信じることから始める

2014.03.20 (Thu)

  バイクの音が聞こえると、康史は窓のカーテンを少しだけ開けて、外の様子を窺った。郵便局員はきびきびとした動きでエントランスから出ていくと、颯爽とバイクに跨って走り去っていった。 康史は高鳴る胸を抑えながら、外に飛び出してポストへ向かった。(今日こそ来てるかな?) 彼が待っているのは、言うまでもなく拓郎からの返事だった。ポストを開くと、見慣れた茶色の封筒が裏側を向いて中に入っていた。部屋に戻るのを待...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第三章 信じることから始める -2-

第三章 信じることから始める

2014.03.18 (Tue)

  自分の部屋でコンビニ弁当を食べ終えた松枝康史は、のそのそと立ち上がって、ハイツのエントランスに設置してある集合ポストへ向かった。郵便配達員は大抵、午後一時過ぎにやってくる。その時間にポストを覗くのが彼の日課になっていた。 愛文通信で文通相手を募集してすでに一ヶ月以上が経つ。何人かに手紙をもらったが、いずれも長続きはしなかった。毎回、相手のほうが先に匙を投げてしまうのだ。それでもまた返事は来るかも...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第三章 信じることから始める -1-

第三章 信じることから始める

2014.03.16 (Sun)

  拓郎が愛文乃会で働くようになり、三週間が過ぎた。 初めはどんなことを手紙に書けば良いのかがわからずに戸惑ったが、今ではすっかり慣れてしまった。 何と言うことはない。自己紹介から始まり、日頃の何げないことや親しい人には言えない悩みごとを書けば良い。相手には顔が見えないし、深く考える必要はないのだ。 文通相手の募集や応募をするには会員登録が必要で、愛文通信の最後に付いている登録用紙に記入の上、郵送で...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第二章 決意 -11-

第二章 決意

2014.03.14 (Fri)

  筆記試験の後、二十分間という少し長い休憩時間を挟んで、面接試験が行われることとなった。「ここからは二人ずつに別れていただきます」 富永に連れられて、イヤホンの女とポイ捨て男が部屋を出ていった。 拓郎は自分が呼ばれるのをじっと待っているつもりだったが、お喋りおばさんのほうが突然立ち上がった。 トイレに行き忘れていたのだろうか。 しかしおばさんの行き先はトイレではなく、正面に据えられたホワイトボード...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第二章 決意 -10-

第二章 決意

2014.03.12 (Wed)

 「あの……こちら、よろしいですか?」「えっ、ああ、どうぞ」 明らかに席は空いているのだから、別に座っても文句は言うまい。きっと律義な性格なんだろう。女性は一礼をして遠慮がちにベンチに座り、続けて拓郎に話を始めた。「いい気持ちですね」 空を見上げて笑うその姿は決して悪い人間には見えない。若い女性のほうは立ったままイヤホンで音楽を聴いているらしく、拓郎たちの会話に参加する様子はなかった。「そうですね。僕...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第二章 決意 -9-

第二章 決意

2014.03.10 (Mon)

 『文友さん募集』 なんだろう。「ふみとも」だろうか。それとも「ぶんとも」、あるいは「ぶんゆう」か。 タイトルをクリックすると、詳細ページが開いた。写真は掲載されておらず、文章のみだ。『株式会社 愛文乃会(あいふみのかい) 文友(ふみとも)さん募集  募集人数:住込み一人(年齢・性別は不問) 給与:月給十二万円(食事代・部屋代含む) 勤務時間:八時間×二十五日 部屋:ワンルーム(トイレ付)共同風呂 ...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第二章 決意 -8-

第二章 決意

2014.03.07 (Fri)

  感傷的な気持ちに浸っているところへ、携帯電話が鳴った。紗江からのメールだった。『どこに行ってるの?』 文字のみのためなのかはわからないが、何の感情も籠っていないように見える。当然、絵文字なんて使っているはずもない。 拓郎は「しばらく帰らない」とだけ書いて返信し、すぐに電源を切った。電話が掛かってくれば、面倒な話になることは明らかだったからだ。 辞表を書き終えて、眠りにつこうと目を閉じたが、いろい...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第二章 決意 -7-

第二章 決意

2014.03.04 (Tue)

  有休を使い切ったため、終業時間後に面接へ行くしかなくなった。しかし夜遅くに面接をしてくれるような会社はやはり少なかった。 仕方なしに適当に理由を付けて欠勤したり、途中で会社を抜け出したりして就職活動を続けていたが、いつまでもそんなことが許されるはずもなかった。「柳瀬君、ちょっといいですか?」 加々見が改まって声を掛けてきたのは、佐野と秋吉が帰った後のことだ。「実は今日、営業所長からあなたのことで...全文を読む

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『親愛なるあなたへ』 第二章 決意 -6-

第二章 決意

2014.03.01 (Sat)

  工場側の見学を終えて二階へ戻ると、先ほど部屋に残った二人の姿はなかった。すでに面接を終えて帰ったのだろう。 奥のドアが開き、白いポロシャツにジーンズを履いたヒゲ面の男が顔を出した。田村が先に呼ばれて中に入っていった。 募集されていた職務内容は作業員だった。経験がそれほどに物を言う仕事にも見えず、拓郎にも多少の自信があった。 他の者には悪いが年齢も一番若い。  二十分ほどして田村と入れ違いで、拓郎...全文を読む

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