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【  2011年06月  】 

『未来が見えたら』 第三章 未来が見えたら -5-

第三章 未来が見えたら

2011.06.29 (Wed)

  煙草の匂いと共に課長が戻ってきた。時間は……ちらりと自分の腕時計に目をやってみる。 午後八時二十四分。 課長は椅子に腰を下ろすと、ネクタイを解いて乱暴に鞄に仕舞った。「野々村。お前、何時までかかりそうだ?」「はい。もう終わります」「そうか」 それだけ言うと、課長は机の上の書類に目を移した。  目を開けて腕時計を確認してみる。 現在の時間は午後八時二十二分。後、二分以内に課長が帰ってくるはずだ。 時...全文を読む

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『未来が見えたら』 第三章 未来が見えたら -4-

第三章 未来が見えたら

2011.06.27 (Mon)

  次に気が付いたときは病院のベッドの上にいた。 最近、どうも病院に縁がある。 体を起こすと、後頭部が痛んだ。そばにいた女性看護師の顔がぱっと明るくなった。「あっ、気が付かれましたか?」「あの……僕は……」「大丈夫ですよ。気を失っていただけなので。しばらくそのまま安静にしておいて下さい」 看護師が出て行った後、銀行での出来事を振り返ってみた。我ながら思い切ったことをしたと思う。 十分ほどして医師がやって...全文を読む

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『未来が見えたら』 第三章 未来が見えたら -3-

第三章 未来が見えたら

2011.06.25 (Sat)

  財布の中身が少々寂しいので、銀行に立ち寄ることにした。 ATMを利用する人の列は長かった。窓口のほうも変わりない。 ぼんやりと順番が来るのを待っていると、僕の頭の中にまた新たなイメージが浮かび上がってきた。 「306番の方」 行員の女性の声を聞き、黒い野球帽に色の濃いサングラスをかけた男がゆっくりと立ち上がった。薄手の上着にグレーのズボンを履き、左手にはスポーツバッグを持っている。   男は窓口...全文を読む

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『未来が見えたら』 第三章 未来が見えたら -2-

第三章 未来が見えたら

2011.06.23 (Thu)

 「おかしいな」 マークシート式の用紙を目の前にして、六つの数字が頭に浮かんでくるのをずっと待っているが、いつまで経っても数字は浮かび上がって来ない。『この売り場から二等が出ました!』  看板に大きくそう書かれている。場所はいいはずだ。 試しに目を閉じてみるが、やはり結果は同じ。 それなら今度は唸ってみるか。「うーん」 やはり結果は同じ。「はっ! えい! 出ろ! コノヤロ!」 僕はありとあらゆる掛け...全文を読む

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『未来が見えたら』 第三章 未来が見えたら -1-

第三章 未来が見えたら

2011.06.21 (Tue)

  退院して出社した僕の顔を見ると、皆、口々に「大丈夫か?」と声を掛けてくれた。 会社自体は全国規模の大企業だが、営業所としては小さなところなので、所内の出来事は瞬く間に全員に行き渡る。自分の席に着くと、まずは課長に頭を下げた。「課長、どうもご迷惑をおかけして申し訳有りませんでした」「いや、大したことなくて良かったよ。病み上がりのところ申し訳ないが、今週の企画書を今日の午前中に作って欲しいんだが……」...全文を読む

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『未来が見えたら』 第二章 覚醒 -7-

第二章 覚醒

2011.06.19 (Sun)

 「それでか。どうするつもりなんだ?」「まだ決めてない」「会うだけ会ってみたら?」「うーん。そうだなあ……」 典弘がニヤリと笑った。「同期の彼女のことが引っかかってるんだな?」 典弘の言葉が図星だったため、何も言い返せなかった。「同期の彼女」とは梓のことだ。 「まだ告白してないのか?」「まあね」 今度は僕が照れ臭くなり、ジョッキに残ったビールを飲み干した。「このまま黙っていても、お前の気持ちはわかって...全文を読む

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『未来が見えたら』 第二章 覚醒 -6-

第二章 覚醒

2011.06.17 (Fri)

  風呂を出てリビングでゆっくりとしていたが、大してやることがなく、すぐに退屈してしまった。寝るにしては早過ぎる。 雑誌でも買いに行こうと外へ出ると、一台の乗用車が僕の前を通り過ぎ、少し行ったところで停止した。運転席のドアが開いて、眼鏡を掛けた細身の青年が顔を見せた。「ヒデだろ?」「ノリか?」 ノリ……北川典弘は小学校から高校までを一緒に通った幼馴染だ。 大学で僕が経済学部、典弘は建築学部へ進んだこと...全文を読む

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『未来が見えたら』 第二章 覚醒 -5-

第二章 覚醒

2011.06.15 (Wed)

  満腹になり、テレビを見ながらお茶をすすっていると、母が改まった口調で「ところで、ヒデ」と切り出してきた。「何?」 また大した話ではないのだろうとうわの空で返事をしたが、思ってもみない言葉が聞こえてきた。「あんた、彼女とかはいるの?」 もう少しでバラエティ番組でお約束のリアクション、『お茶を吹き出す』というのをやってしまいそうになった。この手の話題はこれまでなかった気がする。新聞を読んでいた父もち...全文を読む

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『未来が見えたら』 第二章 覚醒 -4-

第二章 覚醒

2011.06.13 (Mon)

 「ヒデ。もう着くわよ」 母に体を揺さぶられて目を覚ますと、窓の外には見慣れた景色が広がっていた。 実家の前でタクシーが停止した。運転手が会計ボタンを押す前に、僕には料金がわかった。(二千百八十円だ) 僕の頭の中を読み取ったように、運転手が母に料金を告げた。「二千百八十円です」(『細かいのがなくて』と言って、母は一万円札で精算する)「ゴメンなさい。細かいのがなくて……」 母が一万円札を差し出すと、運転...全文を読む

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『未来が見えたら』 第二章 覚醒 -3-

第二章 覚醒

2011.06.11 (Sat)

  昼食を食べ終えてしばらく横になっていたが、気分を変えるため、少し外を歩くことにした。 昨日から寝たきりだったせいで体がだるい。早いところ退院して普通の生活に戻りたいものだ。 ベッドから降りようと体を起こすと、誰かがドアをノックした。そのままの姿勢で返事をすると、「センパーイ! お見舞いでーす」と、元気のいい声と共に松本が中に入ってきて、果物の入った籠を僕に差し出した。この子の明るさは本当に気持ち...全文を読む

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『未来が見えたら』 第二章 覚醒 -2-

第二章 覚醒

2011.06.09 (Thu)

  昼食を食べ終わると、「着替えを持ってきてあげる」と言って母は帰っていった。 再びベッドで横になると、頭と腰に軽い痛みが走り、思わず顔をしかめた。窓からモミジの葉が色づき始めているのが見えた。日頃は季節の移ろいなんて気にも留めていない。一日一日を何気なしに過ごしていたことを改めて実感した。 しばらくそのまま物思いにふけっていたが、また眠気が襲ってきた。  病室のドアをノックする音に応えると、松本が...全文を読む

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『未来が見えたら』 第二章 覚醒 -1-

第二章 覚醒

2011.06.07 (Tue)

  時計を見た途端、ぼんやりとしていた頭が瞬間的に確かなものに変わった。 午前八時半だった。目覚ましは七時にセットしていたが、自分で止めてまた眠ってしまったらしい。 ベッドから飛び起きて最低限の身だしなみを整えると、朝食は食べずに家を出た。 駅まで走り切ればいつもの電車に乗れる。数ヶ月に一度、こういうことをやってしまう。始業時間は午前九時だが、会社の近くに住んでいるため、遅刻にまで至ることは滅多にな...全文を読む

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『未来が見えたら』 第一章 今の生活 -4-

第一章 今の生活

2011.06.05 (Sun)

  結局、松本と二人で二軒目に行くことになった。どうも彼女の押しの強さには負けてしまう。こうなるとわかっていれば、初めの松本の問いかけで「ノー」と答えることができたのに。 グラスを手にした松本が屈託のない笑みを浮かべた。「じゃあ、先輩。改めまして乾杯」「乾杯」 せっかく松本が僕のことを思って二軒目に付き合ってくれているのだ。ここは素直に酒の席を楽しむとするか。 松本のテンションの高さは二軒目でも関係...全文を読む

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『未来が見えたら』 第一章 今の生活 -3-

第一章 今の生活

2011.06.04 (Sat)

  結局、営業所に辿り着いたのは、梓との電話から一時間半後。わざわざ金を払って渋滞する道を通ってしまったというわけだ。 若者連中はほとんど残っておらず、仕事をしているのは課長だけだった。 課長は僕より九つ上の三十五歳。優しい人だが、仕事に関しては真面目でとても厳しい。だからといって、頭が固い人間でもない。そんな課長を僕は兄貴のように慕い、尊敬していた。「おつかれさまです。課長」「おつかれ」 少し無愛...全文を読む

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『未来が見えたら』 第一章 今の生活 -2-

第一章 今の生活

2011.06.02 (Thu)

  四軒目の店に到着する頃には午後五時を過ぎていた。 時間的に今日の営業はこの店で最後になりそうだ。訪問時間は遅くとも午後六時くらいまでで、それ以降は閉店業務やら事務処理、翌日の準備があるため、あまり歓迎されない。終業後、早く帰りたがる者も当然いる。 新商品の説明、陳列を済ませて帰ろうとすると、この店の売り場担当者である下澤が遠慮がちに言った。「あっ、野々村さん。ちょっとコーヒーでも飲みませんか?」...全文を読む

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